最終年度となる平成29年度は(1)フルブリッジインバータの製作と評価、(2)部分影発生時の発電量に関するシミュレーションと比較検討、(3)昇圧コンバータを使用しないトランス方式マイクロインバータの検討を行った。 (1)に関し、今年度は逆潮流を目的とした200V出力を実現すべく回路試作を行った。しかし、GaNトランジスタの特長でもある高速な立上り・立ち下がりが原因でゲート-ソース間電圧の大きな振動が発生することがわかった。当初はドレイン電流の急激な変化により、ソース電位の変動が生じ、これによるゲート-ソース間電圧の変動が生じるものと考え、ゲート抵抗を大きくすることや、ゲートにキャパシタを並列接続することにより入力容量を大きくする方法を採用した。ところが、当然ながらスイッチング損失が増大し、電力変換効率が大幅に低下することとなった。したがって、GaNのスイッチングスピードを活かしつつ、ソース電位の変動を抑えるため、ケルビン接続(ドレイン-ソースのパスとゲート-ソースのパスを分離する方法)方式による基板のレイアウトの検討及び回路基板に寄生するインダクタンス・キャパシタンスの低減を検討したが、効果的な対策法はまだ示すことができていない。 (2)に関しては、シミュレータPSIM(初年度購入)により、部分影の状態を模擬し、既存の集中形パワーコンディショナとマイクロインバータをパネルごとに接続した場合の発電量の検討を行い、マイクロインバータ導入により20%程度の発電量増加が期待できることが確認できた。 (3)に関してはPVからの低圧直流に対し正弦波PWM方式インバータを使用し、昇圧トランス(及びフィルタ)により商用交流を出力する方式を考え、シミュレーション及び回路製作を行った。この結果、実機においてはトランスのコアによる鉄損が非常に大きく、さらなる工夫が必要であることが分かった。
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