研究実績の概要 |
電磁調理器は,日本だけでなく,欧米でも使用されるようになり,その漏れ磁界による生体影響への懸念が少なからずある。したがって,漏れ磁界によるばく露評価は国内外でも多く報告されている。その一方で,電磁調理器の稼働中に金属鍋に触れた際に体内へ流れ込む接触電流によるばく露評価についてはほとんど実施されていないのが現状である。本申請では,電磁調理器からの漏れ磁界と接触電流の両者によるばく露評価を行い,様々な条件下でのデータを蓄積してばく露レベルを示すことを目的としている。 平成27年度では,鍋サイズの違いによる漏れ磁界の大きさについて,実測により調査を行った。測定用の金属鍋として,径が14~20cmでサイズの異なる4つの鍋がセットとして市販されており,メーカーの異なる2セットを用いた。また,測定に使用した磁界測定器の主要な仕様は,10Hz-400kHz, 0.2uT-2mTであり,センサ(プローブ)の大きさは3cm2である。測定は,鍋に70%程度の水を浸して,電磁長調理器の出力を最大にした状態で行った。このとき,電磁調理器のエッジ部(稼動コイル中心から20cm)から80cm離れた位置までプローブを移動させた空間における漏れ磁界の大きさを測定した。 測定結果から,軸上での漏れ磁界強度は,距離の3乗に反比例することを確認した。ただし,エッジ付近(電磁調理器の近傍)ではプローブの空間分解能が低いと考えられる。また,鍋サイズが小さい程,漏れ磁界は大きくなる傾向にあることが分かった。これは,磁界の漏れるすき間が広がるためと考えられる。しかし,使用した金属鍋の材質によっては本現象を確認できない場合もあった。すなわち,鍋サイズによらず漏れ磁界の大きさはほとんど同じであった。
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