研究課題/領域番号 |
15K05973
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
太良尾 浩生 香川高等専門学校, 電気情報工学科, 准教授 (00321498)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 接触電流 |
研究実績の概要 |
日本国内において普及率が増加している家庭用電磁調理器に関して,漏れ磁界による健康影響が懸念されている。その一方で,電磁調理器からは電界も発生しており,金属鍋はその空間で電気的に浮いているため静電誘導により浮遊電位を有している。したがって,調理者が金属鍋に触れると,体内に接触電流が流れる。本研究では,この接触電流に着目し,片手が鍋の金属部に直接触れて,もう片方の手が完全に接地された場合のワーストケースを想定し,接触電流の測定を行った。設置タイプや電圧の異なる16台の電磁調理器について合計24コの加熱ヒータを対象とし,定常状態における接触電流を測定した。また,金属鍋のサイズを変化させて接触電流との関係について検討した。測定結果から以下のことが分かった。 ・接触電流は鍋サイズが大きくなるにつれて大きくなり,ある程度のサイズにおいて飽和する場合があった。いずれにしても,径が最大の鍋(Φ28cm)のときに接触電流の最大値が得られた。接触電流の最大値は加熱ヒータによって異なり,加熱周波数の基本周波成分において0.19 mA~0.94 mA,第2高調波成分において0.026 mA~0.92 mAの範囲で分布した。一方,接触電流の大きさと電磁調理器の供給電圧や消費電力に関して相関は見られなかった。 ・本研究において想定したワーストケースにおける接触電流は,ICNIRPガイドラインの参考レベルに対して最大37%,IEEE安全規格の最大許容電流に対して最大43%であり,両方の許容値を十分満たしていることを確認した。これは,接触電流の大きさが電磁調理器の加熱コイルと鍋底との静電結合状態に大きく依存することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画どおり,電磁調理器から発生する漏れ磁界の測定と接触電流の測定を終えた。これらの結果をまとめて,学術論文として投稿するべく原稿を執筆していた。しかし,執筆中に接触電流に関して最終的な結論を導くには困難であることが判明し,追加的な測定を行った。すなわち,ワーストケースとして鍋サイズが大きいほど接触電流が大きくなることが分かったが,実態調査では一般的に使用される,もっと大きいサイズの鍋を用いていなかった。したがって,サイズが径28cmの鍋を用意して,改めて接触電流の測定を行った。この理由により,原稿執筆が遅れた。 ようやく4月末に原稿執筆を終え,学会誌へ投稿したところである。 また,漏れ磁界による体内誘導電流と接触電流との位相差を測定調査することで,測定結果に基づいて,人体数値モデルを用いた体内電界の数値解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
現在,投稿中の原稿に関して査読審査結果を待っている。また,漏れ磁界による体内誘導電流と接触電流との位相差を調査して,これら同時ばく露による体内電界の数値解析結果を学会発表または論文投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
接触電流に関する追加測定を行う必要から,論文投稿が遅れた。次年度使用計画として論文投稿料とする。また,接触電流と漏れ磁界による体内誘導電流との位相差を調査するための消耗品として使用する計画である。
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