研究課題/領域番号 |
15K05975
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
武山 眞弓 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80236512)
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研究分担者 |
佐藤 勝 北見工業大学, 工学部, 助教 (10636682)
野矢 厚 北見工業大学, 工学部, 教授 (60133807)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 表面・界面物性 / 絶縁膜 / バリヤレス / 3次元集積回路 / シリコン貫通ビア配線 / 拡散 |
研究実績の概要 |
2.5D及び3D集積回路において、ウェハあるいはチップ間を最短で接続するシリコン貫通ビア配線(TSV)が注目されている。中でも、LSIを作製した後、TSVプロセスを行うビア・ラストプロセスでは、ビア配線として低抵抗なCuを使用できるというメリットがある。その一方、CuはSi中を低温でも容易に拡散することが知られており、その拡散制御及びビアの電気的な分離のため、拡散バリヤと絶縁バリヤが必要である。さらに、既に形成されたLSIを劣化させない低温でこれらのバリヤ膜を作製しなければならないという制約がある。 そのような中で、我々はSiNx膜を低温で作製することを念頭におき、全く非加熱でSiNx膜を作製することに成功した。一般に、低温作製されたSiNx膜はCuの拡散を抑制することが困難であり、バリヤ性が期待できないことが知られている。そこで我々は、得られたSiNx膜のCu拡散に対するバリヤ性を検討するため、Cu/SiNx/Si構造、いわゆるバリヤレス構造を作製し、熱処理を行うことで、Cuの拡散の挙動を評価した。その結果、SiNx膜は20nmの膜厚という絶縁バリヤとしては薄い膜厚を用いたものの、700℃程度以上の熱処理後においても、Cuの顕著な拡散が見られないことを確認した。この結果は、低温作製SiNx膜の特性として極めて有用であることが明らかになり、今後引き続きこの有用な特性が得られたメカニズム等の詳細を検討することとした。 一方、拡散バリヤを介した系についても検討を進めており、様々なバリヤ材料をラジカル窒化にて成膜することにより、室温での作製に成功した。さらにそれらのCu拡散に対するバリヤ性についても検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビア・ラストプロセスに適用可能な低温でのSiNx膜の作製に成功し、かつバリヤレスの状態であっても、Cu/SiNx間の顕著なCu拡散を700℃程度以上の高温熱処理後においても抑制できている。 さらに、バリヤレスとの比較のための拡散バリヤ材料を用いた系についても検討も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現状では、スパッタターゲットの処理を工夫することで、高性能な低温SiNx膜が得られているが、今後膜表面にラジカル処理を加えることにより、得られたSiNx膜の特性変化について検討する予定である。 一方、拡散バリヤはラジカル処理にて、全く非加熱で成膜可能なことが明らかとなり、Cu拡散に対するバリヤ性を検討し、最終的には拡散バリヤの有無によるCu拡散の挙動の違いを明らかにする予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度導入を予定していたラジカル発生装置であるが、当初計画以上に良好な絶縁膜を全く非加熱で成膜することができ、その特性評価を主目的としたため。 また、拡散バリヤ材料の成膜に関してはラジカル処理を導入し、どのようなラジカル発生装置とすべきか、基礎的なデータを取得することを優先したため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に基礎的なデータは取得したので、次年度以降は実際にラジカル発生装置を設計、試作することで、さらなる高性能な低温絶縁膜の作製及び拡散バリヤ材料の作製を精力的に行う予定である。
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