研究実績の概要 |
平成27年度の研究計画に従い、CuxAg1-xInS2(CAIS)半導体結晶(x=1, 0.5, 0)を垂直ブリッジマン法により育成した。まず、Cu, Ag, In, Sを化学量論的に秤量し、カーボンコートを施した石英管内に真空封入することで石英アンプルを作製した。作製したアンプルを2ゾーン横型電気炉に設置して、高温部が1100 °C、低温部が800 °Cとなるように段階的にゆっくりと昇温し、その後48時間保持して前合成となる硫黄化を行った。これは、蒸気圧の高い硫黄(S)によるアンプルの破裂を防ぐためである。硫黄化した試料は、粉末状に粉砕し、石英管内に再度真空封入することで新たにアンプルを作製した。次に、x=1となるCIS結晶およびx=0となるAIS結晶では、アンプルを縦型電気炉に設置し、室温から最高温度の1100 °Cまでゆっくりと電気炉の温度を上昇させた後、試料を十分に融解させるために最高温度において48時間以上保持した。その後、約1 cm/dayの速度でアンプルをゆっくりと降下させ、電気炉の温度勾配を利用して融液を徐冷し、結晶を育成した。一方、CAIS結晶(x=0.5)については、使用する元素が四種類となるため、インゴットの組成比にむらが生じないように、融液の均一化に特に注意した。まず硫黄化した試料を封入したアンプルを20°傾斜させた管状電気炉内に設置、ゆっくりと加熱し、最高温度の1100 °Cにおいて一定時間アンプルを回転させた。このとき、アンプルの回転速度は20 rpmとし、1時間毎に逆回転させた。その後、温度勾配を有する縦型電気炉にアンプルを再び設置し、約1 cm/dayの速度でアンプルを炉内降下させることにより結晶を育成した。このような三段階にわたって結晶成長を行うことにより、組成が均一なインゴットの作製に成功した。
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