研究課題
本研究の目的は垂直磁気異方性を有するCoFeB/MgOなど磁気トンネル接合膜の磁気スイッチングに寄与する電子状態(磁気スイッチングに寄与する波動関数の対称性)を明らかにすることである。具体的には①磁気スイッチングにおけるスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメント寄与の解明②スピン磁気モーメント・軌道磁気モーメントの磁気スイッチングとそれに寄与する波動関数の対称性との関連の解明③スピン磁気モーメント・軌道磁気モーメントの磁気スイッチングと磁気光学効果の関連について研究を行う。平成27年度では熱処理による固体エピタキシーによって結晶成長制御したCoFeB(002)/MgO(002)多層膜、アモルファス層CoFeB単層膜の比較評価を行った。平成28年度では新たにアモルファスCoFeB/MgO(002)多層膜、結晶化したCoFeB(110)単層膜を作製し、4つの試料を比較してCoFeB/MgO界面の効果、CoFeB層の結晶化の効果を比較することとした。4つの試料についてスピン選択磁化(Spin Selective Magnetic Hysteresis:SSMH)曲線、軌道選択磁化(Orbital selective Magnetic Hysteresis: OSMH)曲線を測定した。さらに磁気量子数選択的SSMH曲線を求めた。その結果、CoFeB/MgO界面においてはスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの磁化反転挙動は異なっており、軌道磁気モーメントが垂直磁気異方性的挙動を示すことがわかった。さらに、軌道磁気モーメントの磁化反転挙動を支配しているのは、磁気量子数|m|=2の対称性を有する電子軌道であることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
①磁気スイッチングにおけるスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメント寄与の解明においては、CoFeB/MgO界面においてはスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの磁化反転挙動は異なっており、軌道磁気モーメントが垂直磁気異方性的挙動を示すことを新たに明らかにすることができた。②スピン磁気モーメント・軌道磁気モーメントの磁気スイッチングとそれに寄与する波動関数の対称性との関連の解明においては、垂直磁気異方性を付与する軌道磁気モーメントの磁化反転挙動を支配しているのは、磁気量子数|m|=2の対称性を有する電子軌道であることを明らかにした。以上から順調に進んでいると判断した。
今後はTa/CoFeB/MgO/CoFeB磁気トンネル接合において、垂直磁気異方性の増大が報告されている(S. Ikeda et al., Nat. Mater. 9, 721 (2010).)ことから、Ta/CoFeB界面における磁気スイッチング特性の寄与をCoFeB/MgO界面と比較して検討する。さらに、③スピン磁気モーメント・軌道磁気モーメントの磁気スイッチングと磁気光学効果の関連に関連し、磁気光学効果・磁歪などのマクロな特性とスピン選択磁化曲線、軌道選択磁化曲線との関連を検討する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
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