研究実績の概要 |
Cu_2ZnSnS_4(CZTS)太陽電池ではZnサイトのCuがポテンシャル搖動を引き起こし,これが効率低下の原因となっている可能性が指摘されている.本申請では組成比を変化させたCZTSの発光分光を中心に分析することで,ポテンシャル搖動量を低減する方法を模索し,効率改善を図ることを目的としている.27年度は様々な組成比のCZTSをスパッタ法で作製して,そのポテンシャル搖動量を発光スペクトルから見積った.作製した試料の組成比により3つのグループA(Zn/Sn>1.0),B( Zn/Sn<1.0, Cu/(Zn+Sn)<1.0), C (Zn/Sn<1.0, Cu/(Zn+Sn)>1.0)に分けた.試料は532 nmのレーザーで励起し,励起強度を0.04~40W/cm2で,試料温度を5~300Kで変化させた.A, Bともに1.22 eV, 1.31 eVにピークを持つ発光ならびに,バンドからバンドテールへの遷移による発光である1.5 eVより高エネルギー側へ裾を引く発光を示すことがわかった.Cは異相を含み複雑な発光スペクトルを示していたため,分析は行わなかった.A,B発光スペクトルよりポテンシャル搖動の大きさを求めた結果,Znが多い方が,搖動が少ない傾向にあることがわかった.ただし,測定装置の関係で低エネルギー側のスペクトルを正確に測れていないことと,まだ,試料数が少ないことが課題である.また,ホール効果は膜のひび割れのため測ることができず,搖動量と移動度の関係を調べることはできなかった.低エネルギー側の観測系を整備できたので,今後はさらに効率よく発電するCu-poor, Zn-rich領域並びに化学量論比組成領域の発光を詳しく調べる予定である.
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