研究課題/領域番号 |
15K05987
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
浅田 裕法 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (70201887)
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研究分担者 |
仙波 伸也 宇部工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (40342555)
岸本 堅剛 山口大学, 創成科学研究科, 助教 (50234216)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 強磁性半導体 / 異常ネルンスト効果 |
研究実績の概要 |
平成28年度は分子線エピタキシー法によりGaAs(111)基板上に成長した(Ge,Mn)Teの異常ネルンスト効果について調べた。成長温度ならびにTe/Mn供給比を変えた試料を作製した。300 ℃で成長させた試料のRHEED像がストリークであるのに対し、今回250 ℃で成長させた試料は結晶性が悪くリングパターンを示した。得られた試料のMn濃度は成長温度250 ℃では約0.15、成長温度300 ℃では約0.25であった。また、Te/Mn供給比を増加することによりキャリア濃度は減少したが、得られた試料のキャリア濃度は全て比較的高い値を示した。異常ネルンスト効果による起電力の温度依存性を測定したところ、低温における起電力が正となる試料と負となる試料があった。また、試料(成長温度300 ℃)によっては測定温度を上昇させた際に起電力の符号が負から正に反転するものがあった。このような低温における異常ネルンスト電圧の試料による符号の違いや測定温度による符号反転は(Ga,Mn)Asにおいて報告されており、(Ga,Mn)Asで報告されている試料の結晶性と異常ネルンスト電圧特性の関係と同傾向であった。また、異常ネルンスト電圧の温度による符号反転はサイドジャンプ散乱が支配的な系において生じることが示されていることから、抵抗率に対する異常ホール係数の関係から散乱機構を調べたところ今回の試料もサイドジャンプ散乱が支配的であることがわかった。(Ge,Mn)Teは縮退半導体であることから金属を仮定した場合の異常ネルンスト電圧の式を導出し、実験結果と比較したところ、起電力の温度依存性と定性的によい一致を得た。今回の試料においては起電力のキャリア濃度依存性はみられておらず、今後、さらにキャリアの異なる試料、特に低キャリア濃度の試料を作製し詳細に調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(Ge,Mn)Teの異常ネルンスト効果については理論式と比較し一致をみるなど進展しているが、低キャリア濃度の試料の作製に至っておらずキャリア濃度依存性についてはより幅広い検討が必要であり、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
キャリア濃度やMn濃度の異なる(Ge,Mn)Teをさらに作製し、熱電特性についてさらなる検討を行う。特に低キャリア濃度の試料を作製するための条件の検討および熱電および磁気特性評価を行い、材料特性と熱電特性の相関を明らかにする。(Ge,Cr)Teや(Ge,Mn)TeとMnTeの多層膜等の作製ならびに熱電効果を測定し、(Ge,Mn)Te単層膜との比較を行う。特に、MnTeとの多層膜においては熱電効果の温度依存性について検討する。また 、電子線描画を用いて(Ge,Mn)Te細線を作製し、熱電効果を調べる。
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