エレクトロスピニング法(電界紡糸法)により作製したナノファイバーは、サブミクロンの直径をもつ。電極構成やコレクタ構造によって、ランダムファイバーや配向ファイバーなどを自在に作ることができる。ナノファイバーのプラズモニック効果を利用した発光デバイスを研究していたが、2016年度に引き続き、金属がないナノファイバー構造のみ発光増強のメカニズムの解明を調査した。ナノファイバーの堆積量と発光強度にどのような関係があるかを調べるために、ナノファイバーを堆積させながら発光強度の時間変化を測定した。発光強度はナノファイバーの堆積に伴い増加し、ある時間でピークを迎え、その後、発光強度は減衰していった。この結果からナノファイバーの堆積量には最適な量があることが分かった。また、ナノファイバー側から励起するか、ガラス側から励起するかによっても発光増強が変化することも明らかとなった。この実験結果をまとめ、学術雑誌に投稿する予定である。
また、金属薄膜上のLB法によって作製したIr錯体単分子膜の光増強についても調べた。2016年度は、金属薄膜を利用することで最大16倍の増強効果が得られると考えていたが、その考えを否定する23倍の発光増強という実験結果を得た。単なる光の干渉効果で23倍の増強効果が得られるという物理現象を理解することは容易ではなかったが、FDTDシミュレーションによる電磁界解析により、我々のサンプルでは、最大で25倍の増強効果が可能ということが明らかとなった。これらの成果の一部は、Japanese Journal of Applied Physics 誌に掲載されており、更に、本現象についての実験と理論について議論する論文を現在執筆中である。
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