前年度(平成28年度)まで,スーパーワイドバンドギャップ半導体のうち,高周波大電力変換デバイスとしてダイヤモンドが最良の特性が期待できること,ダイヤモンド,Ga2O3のダイオードにてRF-DC変換が可能なことを実証してきた.今年(平成29年度)は,ダイヤモンドのダイオードでRF-DC変換動作の改善および,実用化を見据えたダイヤモンドトランジスタのストレス試験の実施を行った. ダイヤモンドのダイオードを使ったRF-DC変換において,電極面積を変化させたダイオードを試作,RF-DC変換の回路に実装させ,DC変換後の電圧を測定した.その結果,作製したなかで電極面積が最大(0.01 mm2)のダイオードにおいて,ピークtoピーク電圧が20 V,周波数10 MHzのRF(入力)を18.2 VのDC(出力)に変換することができた.DC出力18.2 Vは,本研究において得られた最大の出力である.高周波回路の指標となる容量・抵抗積と出力DC電圧の関係を調べた結果,容量・抵抗積が低いと出力DC電圧が高いものが得られており,RF-DC変換回路においても容量・抵抗積が性能指標の一つとなることがわかった. ダイヤモンドトランジスタストレス試験では,最初の試みとして,ドレイン電流を大きくできるNO2ホールドーピング構造のトランジスタで,ドレイン電圧一定のストレスを印加した試験を実施した.トランジスタにとって,適度なストレス(ドレイン電圧 ‐5 V,ゲート電圧‐1 V)を印加し続けた結果,14.3時間以降,ドレイン電流が急激に劣化した.劣化後,閾値が正側にシフトし,ゲート電流が増加していた.電流の経路やデバイスシミュレーションによる電界の計算からゲート絶縁膜の絶縁性の劣化とアルミナ/ダイヤモンド界面の2次元ホールガスの減少が要因であると考えられる.
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