研究課題/領域番号 |
15K05991
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中村 有水 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (00381004)
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研究分担者 |
境 健太郎 宮崎大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20336291)
浪平 隆男 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 准教授 (40315289)
山口 敦史 金沢工業大学, 工学部, 教授 (60449428)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | LED / 酸化物半導体 / ミストCVD / 酸化亜鉛 |
研究実績の概要 |
近年、窒化物半導体を用いた青色発光ダイオードは世界的に普及しているが、さらなる低価格化に向け、我々は大気圧で成膜可能なミスト化学気相成長法(ミストCVD)による酸化物半導体の形成と評価を行っている。今年度は、熊本地震で多くの実験装置が損傷を受けたが、2つの点で進展が有った。 一つ目は、酸化亜鉛の結晶性が、100nm程度の小さな結晶粒を有する多結晶酸化亜鉛をバッファー層として、単結晶の成長を行った結果、X線回折測定(ωロッキングカーブ)により結晶性の向上が見られ、この成果を国際学会で発表し、論文化も行った。以下、詳細について説明する。これまで、ミストCVDによる酸化亜鉛の結晶成長においては、結晶粒が数μmレベルと大きくなる塩化亜鉛水溶液を単結晶の形成に用いていた。一方、酢酸亜鉛水溶液を用いると、100nm程度の小さな結晶粒が形成されるため、単結晶の形成には用いていなかった。しかるに、微小粒がバッファー層になるという報告が有ったため、この酢酸亜鉛水溶液で厚さ数十nmの薄いバッファー層を形成し、その上に、塩化亜鉛水溶液で厚い単結晶層を形成したところ単結晶層の品質が向上した次第である。 2つ目は、P型化に向けて、アンモニア雰囲気中での酸化亜鉛の熱処理の実験を続けていたが、P型ドーパントである窒素を安定的に高濃度で添加する条件を見出した。なお、ホール測定では、まだP型化は確認できていないが、これは、同熱処理中に同時にドーピングされた水素がドナーとしてN型化に寄与し、生成された正孔を消滅していると考えられる。よって、今後、ドーピングされた水素を上手く脱離させる条件を見い出し、来年度中にLED試作まで到達したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究が計画より遅れている理由は、昨年4月に熊本地震が有り、我々の研究室の実験設備だけでなく、大学の共通施設に設置されていた多くの分析機器が使用不能となり、研究が数ケ月止まったためである。しかしながら、酸化亜鉛の結晶性は、バッファー層の導入により昨年度より向上しており、また、P型ドーパントである窒素を安定的に高濃度で添加する条件を見出した事は大きく、来年度中に最終目的であるLEDの試作に到達したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度末までに、当初の最終目的であるLEDの試作に辿り着くために、10月頃までに酸化亜鉛のP型化を容量・電圧測定やX線光電子分光法等により確認したい。そのためには、アンモニア雰囲気での熱処理により、窒素(アクセプタ)と共にドーピングされた水素(ドナー)を上手く脱離させる事が重要である。そこで、昇温脱離による質量分析等を用いて、水素を選択的に脱離させる条件を見い出す予定である。また、P型用のオーミック電極を形成するため、どの様な金属電極を選択するのが良いか調べる必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、昨年4月に熊本地震が有り、我々の研究室の実験設備だけでなく、大学の共通施設に設置されていた多くの分析機器が使用不能となり、研究が数ケ月止まったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
本予算の使用計画としては、当初の3年間を通した全体計画に一致したものであり、サファイア基板や使用溶液の購入、作製した酸化物薄膜の分析、また、それら研究成果を発表するための学会出張等である。
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