最終年度も引き続き、Siナノ粒子インクから多孔質Si膜を塗布形成し、異なるガス雰囲気下あるいは紫外から赤外域での様々な単色光照射下での電気伝導性を調べた。 最終年度に新たに追加したガス種は、酸化性ガスは二酸化炭素、還元性ガスは水素、メタン、プロパンである。実験の結果、二酸化炭素の導入時は、ノンドープあるいはn形の多孔質Si膜で電気伝導性が下がることを確認した。水素、メタン、プロパンについては、Siナノ粒子の粒径や塗布後の熱処理温度を様々に変えたが、ノンドープ、n形、p形の全てにおいて再現性のある明確な応答は確認できなかった。 光照射下での電気伝導性に関しては、光子流量を一定としながら光子エネルギーを変化させて電気伝導性変化を調べた。その結果、光子エネルギーが多孔質Si膜のバンドギャップエネルギーの約2倍を超えると、電気伝導が急に高まることがわかった(この現象は、平均粒径の異なるSiナノ粒子で多孔質Si膜を塗布形成して確かめた)。 研究期間全体を振り返ると、本研究で得られた成果は次の3つである。第一に、様々な有機分子(カルボン酸、アルコール、アミノ酸)で表面修飾されたSiナノ粒子から多孔質Si膜形成に適したインクを作製する方法を確立した。第二に、塗布形成された多孔質Si膜がガスセンサー材料として使用できることを示した。特に、酸化性ガスでは酸素と二酸化炭素、還元性ガスでは一酸化炭素で、電気伝導性の明らかな変化が見られ、それらのガスが取り除かれれば、電気伝導度は元の値に戻った。第三に、バンドギャップエネルギーの二倍以上の光子エネルギーの光を塗布膜に照射すると、膜の電気伝導度が大きく上昇するという、ナノSi特有の光伝導性を確認した。今後は、ガスセンサー材料、光導電性材料としての経時変化を調べる必要がある。
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