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2015 年度 実施状況報告書

高電界技術を用いたナノ粒子の分散挙動制御とその応用に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K05996
研究機関金沢工業大学

研究代表者

花岡 良一  金沢工業大学, 工学部, 教授 (90148148)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード有機溶媒 / バリア放電分散法 / 電界分散法 / 交流電圧 / カーボンナノチューブ / カーボンブラック / ナノコンポジット
研究実績の概要

大きさが1~100nmの範囲にあるナノ粒子は,100nm以上の大きさの粒子に比べて,物理的,化学的性質・機能が著しく変化するため,様々な分野の利用・応用が期待されている。しかし,ナノ粒子は,普遍的に働く粒子間のvan der Waals引力により付着・凝集性が著しく高く,分散挙動制御が極端に困難となる。合成したナノ粒子を材料などの原料として利用する場合,ナノ粒子の分散安定化を達成しない限り,粒子応用デバイスなどへの新たな実現は極めて難しい。本研究は,主にカーボンナノチューブ(CNT)またはカーボンブラック(CB)粒子に着目し,従来の化学的および機械的分散法に代わって, 高電界技術を用いた効率的な分散法を新たに構築し,均一性に優れかつ再凝集性を抑制したナノ粒子の分散を実現する。また,分散したナノ粒子の応用を検討し,ナノマテリアルの構造材料への革新的技術に貢献することを目的とする。近年, 液体中でナノ粒子を実際の製品に応用できるレベルまで効率良く分散する技術, およびナノ粒子を利用した様々な紛体プロセスの総合的な技術発展が強く望まれ,これらの研究を遂行することは,今後,我が国のナノテクノロジーを発展させ,高度化する上で極めて重要である。
本研究で提案するナノ粒子分散技術は,ナノ粒子の凝集塊を有機溶媒等に懸濁し,その中で高電界を発生させ,その電気的効果により均一分散化する手法である。これは,従来の方法と全く異なり,酸や界面活性剤,その他の添加物を全く使用しない新しい分散法であり,本研究の独創的な点と言える。
本年度の研究では,ナノ粒子分散技術の高度化を図り,「放電分散法」と「電界分散法」命名した手法の併用システムを構築し,有機溶媒中に凝集したCNT粒子が,効率的に分散できること,およびCNTエポキシコンポジットの機械的破壊応力が向上することを実験によって確認し,学会等で公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ナノ粒子の分散度と分散安定性を向上するため,これまでのバリア放電による分散法(放電分散法(DDM))に加え,電界強度を利用した分散法(電界分散法(FDM))を新たに開発し,有機溶媒(2-ethyl-1-hexanol)中に懸濁した多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の分散評価を行った。DDMはバリア放電に基づく分散法であり,MWCNTの分散と同時に再凝集性の防止に着眼したものである。また,FDMは電界の効果による分散法であり,MWCNTのより微細な分散度を得ることに着眼したものである。分散性の向上は,DDMとFDMの併用,すなわちハイブリッド分散法によって効率良く得られることが分った。また,FTIR分析を行った結果,ハイブリッド分散法によって処理されたMWCNT表面は,カルボニル基(C=C),カルボキシル基(O-H),アルキル基(C-H),C-O結合などのグループによって化学的に修正されることが分った。さらに,CNT応用の予備的実験として,CNTsをフィラーとしたエポキシナノコンポジットを作製し,その機械的応力(引張強度)試験を行った結果,最大引張応力はCNT濃度0.01-0.02wt%で得られ,この値はCNTフリーエポキシレジンのそれの約1.56倍となることが分かった。しかし,CNT濃度が0.02wt%以上のコンポジットでは,その引張応力が濃度の増加に伴い減少傾向を示した。これは,分散したCNTがコンポジットを構成するエポキシ主剤と硬化剤との間に入り込み,分子結合力を阻害するためと考えられる。

今後の研究の推進方策

ナノ粒子分散性の更なる向上を図り,ナノコンポジットの特性解明を行う。これまでの研究では,CNTsの分散溶媒として2-ethyl-1-hexanolを用いたが,この溶媒の沸点が186℃とかなり高い為,コンポジットを作成する際,溶媒を完全に揮発させていない可能性がある。今後は,より低い沸点,かつ安定な放電が得られる溶媒を検討し,粒子分散実験を続行する。また,コンポジット材料として,エポキシナノコンポジットに加え,エラストマーナノコンポジットを研究対象とし,機械的応力特性に加えて電気的特性(体積抵抗率,誘電率,誘電損失等)の特性を明らかにして,それらの応用を検討して行く予定である。

次年度使用額が生じた理由

新規に提案した電気的ナノ粒子分散法の基づいて作成されるナノ粒子(CNT)をフィラーとしたナノエポキシコンポジットおよびナノエラストマーコンポジットの作成は,次年度の計画に織り込まれ,そのための材料費として必要である。また,ナノエラストマーコンポジットの機械的特性を計測するに当たり,現有の引張強度試験機のロードセルを変更する必要があり、そのための改造費が必要となる。

次年度使用額の使用計画

上記の材料費,改造費,および当初の計画予算は,次年度の研究費として使用させて頂く。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (3件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] 有機溶媒中に懸濁したCNTの電気的分散法2015

    • 著者名/発表者名
      平野靖奈,澤崎広和,花岡良一,宮城克徳
    • 学会等名
      電気学会A部門大会,p. 258
    • 発表場所
      石川(金沢)
    • 年月日
      2015-09-18
  • [学会発表] 有機溶媒中の電気的CNT粒子分散2015

    • 著者名/発表者名
      平野靖奈,澤崎広和,花岡良一,宮城克徳,大澤直樹
    • 学会等名
      平成27年度電気関係学会北陸支部連合大会,A2-10
    • 発表場所
      石川(金沢)
    • 年月日
      2015-09-12
  • [学会発表] Electrical Dispersion of CNTs in Organic Solvent: Combination Effect of Barrier Discharge and Electric Field2015

    • 著者名/発表者名
      H. Sawazaki, Y. Hirano, R. Hanaoka, K. Miyagi, N. Osawa, Y. Kanamaru, H. Anzai
    • 学会等名
      19th Int. Symp. on High Voltage Eng., No.196
    • 発表場所
      Pilsen, Czech Republic
    • 年月日
      2015-08-23 – 2015-08-28
  • [図書] 「紛体・微粒子分析テクニック事例集」,第17節 バリア放電技術によるナノ粒子分散化とSEM観測およびIRを用いた組成分析2015

    • 著者名/発表者名
      花岡良一
    • 総ページ数
      2
    • 出版者
      (株)技術情報協会
  • [産業財産権] フィラー分散液の製造方法および製造装置2015

    • 発明者名
      安齋秀伸,花岡良一,下大川丈晴,寺坂澄孝
    • 権利者名
      安齋秀伸,花岡良一,下大川丈晴,寺坂澄孝
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2015-164004
    • 出願年月日
      2015-08-21

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公開日: 2017-01-06  

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