研究実績の概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)やカーボンブラック(CB)などのナノ粒子は,優れた電気的,機械的,熱的特性から幅広い分野への応用が期待される。しかし,製造時は粒子間のファンデルワールス力により強固な凝集体を形成し,有機溶媒や樹脂への分散性が極めて低いため,凝集体の安定分散化を実現しない限り応用への発展は難しい。 <主な成果> 凝集したCNTまたはCB粒子を有機溶媒に混合した懸濁液中で高電界を発生させ,「バリア放電」と「電界効果」により効率的な粒子分散手法を開発し,それぞれ「DDM」と「FDM」と命名した。この手法は,化学薬品を全く使用しない新規な分散法である。また,分散したナノ粒子を含むコンポジットを試作し,それらの機械的・電気的特性を計測した。その結果, (1) DDMとFDMの併用による粒子分散化:①ナノ粒子の凝集体は,DDMで発生したバリア放電衝撃波により分散され, FDMによって粒子と固体障壁との衝突効果により更に促進される。SEM観測から,凝集体の少ない分散効果が得られることが分った。なお,放電による粒子の損傷は確認されない。②レーザ光透過率測定から分散安定性を評価した結果,粒子の沈降が少ない良好な分散安定状態を保つことが分った。③溶媒にはフッ素系のHFC-52-13pが適する。FTIRスペクトルから,分散処理後のナノ粒子表面に活性イオン(O*, H*, F*など)が修飾されることが確認された。これらのイオンによる粒子表面のζ電位は,粒子間に斥力を及ぼし粒子分散性を向上させる。(2) コンポジットの機械的・電気的特性:微量(0.02~0.05wt%程度)のCNTまたはCBを添加することにより,①エポキシおよびエラストマーコンポジットの機械的特性は向上することが分った。②電気的特性としては,体積抵抗率は減少し,比誘電率と誘電正接は増加する。
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