研究実績の概要 |
我々は、薄膜を使って、実用レベルの発振強度を持つテラヘルツ(THz)素子を目指し、Bi系超伝導薄膜の高品質化を進めてきた。その過程で、非c軸配向の単結晶膜を用いると、表面に電極を設けるだけの極めて簡単な構造で、実用化に向けブレークスルーするべき最大の課題である、高強度のTHz波を発振する新しい素子ができることを着想した。 最終年度に当たり、インパクトファクター(IF)の高い論文誌(Materials, 2019.4.1受理、IF=2.467)に投稿し、① ガン診断、食品検査、危険物探知など、X線に替わる非破壊検査法として、「安全で安心な」素子への応用が期待されているTHz波の「強度問題」を解決する、今までにない全く新しい素子構造を提示し、② それを実現するために不可欠な、双晶の無い(twin-free)、非c軸配向の高品質なBi2Sr2CaCu2O8(Bi-2212)のエピタキシャル薄膜の作製について成功したので報告した。 薄膜作製は、独自に開発した有機金属化学気相成長法(MOCVD)に拠り、格子エンジニアリング、テンプレート法、傾斜基板法などの新しいコンセプトを駆使して行った。その結果、THz発振に不可欠な低誘電率の単結晶基板上に作製した薄膜が、c軸が1方向に約45度傾いて揃った、双晶の無い(twin-free)高品質な(117) Bi-2212の非c 軸配向エピタキシャル薄膜であることを、新たに開発したX線回折法を用いて実証した。(特開2016-222467)この他に、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、ICP発光分光分析、直流4端子抵抗測定で評価した。 また、配向制御の鍵を握る基板単結晶の育成を行い、インパクトファクターの高い論文誌(Crystal Growth & Design, 2018.12.19発刊、IF=3.972)に発表した。
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