研究実績の概要 |
実用化されているハードディスク(HD)用垂直磁気記録媒体の記録層は,c面配向CoPt基合金コラム状磁性結晶粒の粒界に酸化物を析出させたグラニュラ組織からなる.現在の垂直磁気記録媒体の記録密度は約800 Gbit/in2であるが,次世代媒体の記録密度は2~4 Tbit/in2が求められている.媒体の記録層の磁性結晶粒のさらなる微細化は,熱安定性が低下し保存した記録が熱揺らぎによって消えてしまう物理的な問題がある.この熱揺らぎの問題を解決するために,記録層に用いる磁性材料は一軸結晶磁気異方性エネルギー(Ku)が高い材料が求められている.4 Tbit/in2の実現のためには,現行より一桁高いKu > 2×107 erg/cm3が必要とされる.本研究の目的は,次世代HD用垂直磁気記録媒体の超高記録密度化のために新たな媒体材料を開発することである.我々は,実用材料であるCoPt基合金の高Ku化を図り,その磁性材料を粒径6 nm以下に微細化したグラニュラ材料を開発することを目指している.また,高Kuグラニュラ材料は,新たな超高密度磁気記録技術として提案されている熱アシスト磁気記録,マイクロ波アシスト磁気記録を実現する媒体材料としても求められている. 平成27年度は,六方晶CoPt合金薄膜の原子層組成変調構造導入による高Ku化とそのグラニュラ化に向けて,次の検討を行った.(1)六方晶CoPt合金薄膜の加熱成膜時のKu低下問題について,各種添加元素(Si, Ti, Cr, W, O)の原子層組成変調構造とKuに及ぼす影響を明らかにした.(2)高Kuを持つCoPt合金磁性結晶粒を柱状成長させるための下地層の条件検討を行い,下地層は平滑かつ小粒径で深い空隙を有することが必要条件であることがわかった.
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