本研究では,2次元磁性フォトニック結晶を用いた平面導波路型光サーキュレータの実験実証を行うことを目的として,有限要素法による計算機シミュレーションを用いた構造設計と,シリコンフォトニクス技術を用いたプロトタイプ作製および微小光デバイスの偏光分光測定によるデバイス特性評価を目指している. 計算機シミュレーションによる構造設計においては,2次元モデル計算により網羅的に構造を変化させ,より低損失・高アイソレーションの構造探索を行った.3次元モデル計算では,これまでメモリ容量などの問題から計算を進めづらい状況があったが,計算環境の改善によりある程度大きなモデルでも計算を進められるようになった.これにより,2次元モデル計算での知見を生かし,3次元モデルを用いて系統的に構造を変化させながら構造変化に対する特性変化の計算を進めた.これまで,作製プロセスの容易さなどからSOI(Silicon On Insulator)基板上にデバイスを形成することを想定し,デバイス下に二酸化シリコン層が存在する計算モデルによってシミュレーションを行ってきた.しかし,この構造では下方向への光リークが大きく,また非対称の構造となることからフォトニックバンド構造の乱れが大きくなった.これにより光局在特性が低下しサーキュレータの挿入損失が大きくアイソレーションが非常に小さくなることがわかった.そこで作製プロセスは複雑となるがMEMSデバイスで用いられるメンブレン構造を想定し,デバイスの上下を空気(真空)層とした構造について計算したところ,フォトニックバンド構造が2次元モデル計算の場合に近づくことがわかった.このように,SOI構造では光サーキュレータデバイスの実現が難しく,メンブレン構造をとる必要があると考えられる.
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