研究課題/領域番号 |
15K06005
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
羽渕 仁恵 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90270264)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グラファイト状窒化炭素 / 層状構造 |
研究実績の概要 |
グラファイト状窒化炭素(g-C3N4)は約2.8eVのバンドギャップを持つ半導体になることが報告されており、新しい半導体材料として期待できる。我々はグアニジン炭酸塩を原料とし蒸着法でg-C3N4薄膜を合成し、半導体としての性質を調べてきた。本年度は減圧下での合成や原料をメラミンに変えて合成し、得られた薄膜の物性を調べた。 グアニジン炭酸塩を原料としたときのg-C3N4薄膜(G)について、合成時の圧力を下げるとCNシート二次元構造は不明瞭になっていくが、導電率は上昇する。光収吸収スペクトルを測定するとバンドギャップ以下の吸収が上昇した。すなわちバンドギャップ内の局在準位が増え、熱励起でキャリアとなっていると考えられる。圧力を数Paまで下げていくと導電率は大気圧合成に比べて3桁程度上昇した。単色光(波長400nm)を当てたときの導電率の変化(Δσp)と当てていないときの暗導電率(σd)の比Δσp/σdを合成圧力に対してプロットするとほぼ比例関係にあり、1Paのときは0.5、大気圧のときは200であった。 メラミンを原料としたときのg-C3N4薄膜(M)について、X線回折を測定した。集中法では2θ=27.7°にCNシートの層状構造に対応する(002)面のピークが観測され、その強度を比較するとメラミン>グアニジン炭酸塩(大気)>グアニジン炭酸塩(減圧)であった。(002)面の極点図では中心にのみ回折が見られることからCN層は基板に対して平行に配向している言える。(002)面のロッキングカーブの半値幅(モザイクスプレッド:MS)は8.9°であった。さらにg-C3N4薄膜(M)はバンドギャップは薄膜(G)と比べると0.1eVほど高くタウツプロットで求めた値は2.9eVであった。Δσp/σdは1000以上となり、薄膜(G)の5倍以上である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜の表面状態は改善され、電気伝導の測定は薄膜そのものの物性をよく反映した結果が得られるようになった。また、いろいろな原料で合成実験を行い、そのうちメラミンを原料として合成した場合、配向性がはっきりした膜が得られた。薄膜の光感度は研究開始時に比べると向上しており、他の層状物質との比較もできるようになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところキャリアのpn制御には至っていない。今後はFETを作製してキャリアの性質を調べていく。また、MS値は良質のHOPGに比べると大きい(つまり配向性が悪い)。現在は基板に石英ガラスを用いているが、基板を薄膜の格子定数に近いものに変えることで向上すると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際会議での発表が調整ができず参加できなかった。次年度で実施予定の実験物品をいくつか購入したが、結果として余剰金が生じた。
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