グラファイト状窒化炭素(g-C3N4)は約2.8eVのバンドギャップを持つ半導体になることが報告されており、新しい半導体材料として期待できる。令和元年度は、結晶性向上を目指し、メラミンを原料とし蒸着法でg-C3N4薄膜を合成した。得られた結果は以下の通りである。 1) SEM像から平坦な表面の薄膜が得られている。XRRのパターンのフィッティングから表面のラフネスは1nm以下となった。薄膜の密度は2.13g/cm^3であり、基板側と表面側には10nm程度の高密度なレイヤーが存在している。基板側はアモルファス的なレイヤーと推測される。 2) out-of-planeとin-plane法でXRDの測定をおなった。out-of-planeでは、 27.77 と 57.3°に(001)および(002)の回折ピークが観測できた。(001)の極点図は中心にのみ回折ピークがあり、基板に平行な回折面が2次元的に存在していることを確認できた。in-planeでは(hk0)の回折面を観測することができた。その回折パターンを3つのCNシート構造を仮定してパターンをシミュレーションして実験と比較した。もっともよく引用されるtri-s-triazine (s-heptazine)のユニットを持つg-C3N4(HGCN)では回折ピークの位置が一致しない。合成が確認されているtriazineユニットを持つg-C3N4(TGCN)も同様に一致しない。Lotschが提案したmelemがジグザグにつながったモデルはほとんどのピークで一致が見られ、12.6°と25.7°の回折ピークは(210)と(420)と同定できた。この結果により、合成した薄膜はグラファイト状の構造でなく、ポリマー的な2次元構造を持つ層状物質のポリマー窒化炭素(PCN)であることがわかった。
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