研究課題/領域番号 |
15K06015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
龍頭 啓充 京都大学, 工学研究科, 講師 (20392178)
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研究分担者 |
竹内 光明 京都大学, 工学研究科, 助教 (10552656)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イオンビーム / クラスター / スピントロニクス / スパッタリング / プロセッシング |
研究実績の概要 |
クラスターイオンが固体表面に衝突する際、高温高圧な反応場が形成されるため、多原子分子を材料とする液体クラスターイオンビームを照射すると、様々な化学反応の寄与が期待される。これまで液体クラスターイオンビームが半導体等の材料に対して高い加工性能、酸化膜形成効果、表面平坦化効果を示すことが報告されている。本研究では、この液体クラスターイオンビーム技術を、スピントロニクス分野で用いられる材料に対する表面改質、表面加工に応用することを目指している。 平成28年度は、平成27年度に選定、購入したスパッタカソード、スパッタ用高圧電源、マスフローコントローラー等を用いて成膜を行い、液体クラスターイオンビームの加工性能に関する予備的な測定を行った。 初めに水晶振動子を用いた膜厚モニターを校正するために、マグネトロンスパッタリング法により作製した薄膜の質量膜厚をラザフォード後方散乱法を用いて測定した。また、形状膜厚(幾何学的膜厚)を触針式表面形状測定装置を用いて測定した。この他作製した薄膜についてエックス線回折による結晶構造の評価を行った。さらに、原子間力顕微鏡を用いて表面モルフォロジー及び表面粗さの評価を行った。 次に液体クラスターイオンビームによる加工性能について評価するために、液体クラスターイオンビームの作製した薄膜に対するスパッタ率を測定した。また、液体クラスターイオンビームを用いた加工時の薄膜表面へのダメージを評価するために、原子間力顕微鏡を用いて、液体クラスターイオンビーム照射後の薄膜表面の表面粗さを測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度にスパッタカソードやスパッタ用電源等を選定したが、選定にあたり為替変動等の影響により当初予定していたものは購入が困難であったため、検討の結果、異なった性能のものを選定した。これによりスパッタカソードの直径が減少したため、磁性材料の膜を作製する際の条件が、当初想定していたものと異なった。このため、当初予定していたよりも小さな厚みのスパッタターゲットを銅製のバッキングプレートにインジウムを用いてボンディングすることにより対応した。この対応により磁性材料の薄膜を作製することができた。また、スパッタカソードの冷却配管が外れる不具合が生じたが、再接続することにより対応した。 成膜に用いたスパッタ用高圧電源、マスフローコントローラーも当初予定していたものと異なっていたが、良好に動作した。また、膜厚計についても既存の膜厚計の水晶振動子のみを交換して使用を試みたところ、ラザフォード後方散乱法等を用いた校正と組み合わせることにより良好に使用することができた。さらに、エックス線回折を用いた結晶構造の評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度にも引き続きスピントロニクス分野で使用される材料の薄膜の作製を行い、液体クラスターイオンビームによる微細加工、表面平坦化、酸化膜形成能力について調べたい。この際、前者二点すなわち微細加工能力及び表面平坦化能力については、主としてアセトンクラスターイオンビーム及びエタノールクラスターイオンビームの照射効果について調べ、酸化膜形成能力については水クラスターイオンビームの照射効果について調べたい。 評価方法としては、前年度に使用したエックス線回折、原子間力顕微鏡に加えて、アセトン及びエタノールクラスターイオンビームを用いた加工時の断面の観察に走査型電子顕微鏡を、水クラスターイオンビームを用いた表面酸化の評価に光電子分光法を用いたい。また、前年度に膜厚の校正に使用したラザフォード後方散乱法を、作製した薄膜の評価に用いたい。さらに、クラスターイオンビームを用いた新たな分析手法として提案されている、クラスターイオンビーム誘起ルミネッセンスを用いた分析も試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は少額のため、平成28年度に残額のみでの執行が困難だったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は少額のため、平成29年度の使用計画に変更はない。
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