複数の金属柱からなる単位セルを六法格子状に並べて負屈折率媒質を構成した.誘電性を金属柱による電磁波の遮断特性で,磁性を複数の金属柱とギャップからなる閉ループを流れる電流で得ている.等価的に透磁率を負とするために共振現象を利用している.単位セルを波長に対して小さくするために共振周波数を下げているが,このために金属柱を長くしてインダクタンスを大きくしている.このときその断面積は変わらないため,電磁波の伝搬面内の単位セル寸法を波長に対して相当に小さくすることが可能になった.ただし周波数を下げ波長に対して角柱の間隔を短くし単位セルを小さくすると,屈折率が負となる左手系モードが伝搬する周波数帯域が狭くなった.このため,より小さなセル構造もシミュレーション上では設計できたが,試作実験のことを考慮して,比帯域幅4%程度を確保するために波長に対して1/10の大きさのセル構造となった.さらに,媒質へ入射する波との整合を良くし-6dB以下まで反射係数を下げたため,最終的に単位セル寸法が1/6となる設計値でレンズを試作した. このレンズのリフォーカス点における結像分布は回折限界の分布と比べて広がりが74%程度に抑えられていた.初年度に試作した単位セル寸法が1/3の媒質では整合がよりとれており,リフォーカス点付近の波の位相分布がより同心円状となっていたが分布の広がりは回折限界より大きい.これに対して最終年度作成の1/6の媒質では位相分布は歪んでいるが分布は小さくなった.伝搬波によるリフォーカス点への収束効果は下がったものの小型セルにしたことでエバニシェント波による効果がそれを補う以上に効いているものと考えられる.負屈折率媒質レンズにより高い解像度で結像させるためにエバニシェント波の働きが大きいことが示された.
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