研究課題/領域番号 |
15K06023
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
松島 章 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (70157303)
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研究分担者 |
福迫 武 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (90295121)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズモニクス / 積分方程式 / モード整合法 / ウィーナー・ホッフ法 / 電界増強 / 境界条件 |
研究実績の概要 |
可視光の波長程度の寸法をもつ金や銀などの貴金属素子に発生する表面プラズモンおよび局在プラズモンを対象として、本研究者らが準備段階として開発してきた計算電磁気学の解析手法を素子の形状や配列形態に応じてカスタマイズし、次年度以降のデータ収集がスムーズに実行できるような基礎付けを達成した。貴金属の近傍に電界エネルギーを蓄積することにより光デバイスの効率や感度の向上を図るという目標を念頭に置き、素子の構造による特性抽出すなわちパラメータ依存性の把握が可能となるように、基本的な貴金属素片を4種類選択した。それぞれの具体的な解析手法は、円板に対するベクトル界の積分方程式法、有限幅平板に対するスカラー界の積分方程式法、球に対するモード整合法、半無限平板に対するウィーナー・ホッフ法である。円板および平板については、素子が波長に比べて十分に薄いときに有効なインピーダンス形の境界条件を適用することにより、計算の簡便化を図った。この条件を用いる際には、従来は表面電流または表面磁流のいずれか一方を考慮していたが、本研究では両方の電磁流を解析に取り入れることにより、可視光に対する貴金属の誘電率が負であることに起因するプラズモニクスの現象を完全に表現することが可能となった。また、円板および球に関しては、従来の研究者より報告されてきた単体の局在プラズモンの共鳴特性に加えて、複数個を周期配列した場合に別の波長で生ずる格子共鳴についても散乱断面積および近傍電界の計算により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究者は計算電磁気学の専門家として、積分方程式、モード整合法、ウィーナー・ホッフ法などの計算技法を長年開発してきたが、負の誘電率から起こるプラズモン共鳴という特殊な現象を対象とする際には、定式化や特殊関数の取り扱い方に独特の工夫を凝らす必要があった。そのような展開について、インピーダンス形境界条件や周期条件を解析に導入することにより、現在までおおむね成功しており、これらの研究成果を学術論文、学会、研究会において公表してきた。
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今後の研究の推進方策 |
計算電磁気学の手法をさらに発展させるとともに、光デバイスの特性向上や設計指針の構築に寄与するようにデータ収集を進める。その方策を以下の三項目にまとめる。 1)円板や平板に対するインピーダンス形境界条件の適用限界を脱して、任意の厚みをもつ貴金属素子に対して境界条件を厳密に適用する。解析は比較的煩雑となるが、厚みに制限を設けない方が特性向上につながる可能性がある。 2)半無限平板すなわち稜線を一本しかもたない場合のプラズモン表面波の励振メカニズムを定量化し、有限幅平板すなわち稜線が二本ある場合の共鳴条件を与える理論式を構築する。 3)金属素片が単体の場合の局在共鳴と、周期的に配列した場合の格子共鳴と関係をさらに検討し、両者が機能的に結合されるような素子構造を考案することにより、さらなる電界増強度の向上を図る。
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