多孔質ポリマーを用いたミリ波用液晶フレネルレンズの実現を目指して、3Dプリンタによるミリ波用レンズ基板作製の可能性を検討した。焦点距離を30mm、50mm、100mmとし、直径が50mm程度になるように凸レンズの設計を行った。このときゾーンの周期はわずか2周期程度になるが、レンズ特性の測定結果によると回折限界に迫る良好なミリ波収束特性が得られる事が確認された。3Dプリンタの積層の層厚に対応して、肉眼でもはっきり確認できる凹凸がレンズ表面に存在するが、ミリ波収束特性には大きな影響は無く、多孔質ポリマーを用いて超厚膜液晶層を形成するための基板として十分に使用可能である事が分かった。 次に、フレネルレンズ基板のように大きな凹凸構造を有する基板にモノリスを用いて超厚膜液晶層を形成する為に、スプレイ法による多孔質ポリマー膜の形成法およびその積層法について検討した。膜の形成プロセスを詳しく観察した結果、スプレイとほぼ同時に相分離が起こりゲル状の膜が基板上に形成され、その後5分~10分程度で徐々に溶媒が乾燥すると共に白濁した薄い膜が形成される事が分かった。顕微鏡やSEM観察によると、乾燥による収縮現象が膜厚方向だけでなく面内方向にも生じており、島状に疎らに多孔質材料が分布した不均一な膜が形成されている事が分かった。一回のスプレイで形成される薄い膜でも強い光散乱効果が生じており、材料そのものの多孔質構造以上に島状の構造が強い光散乱特性を生じる原因になっていると考えられる。また、十分に乾燥させた膜上に順次スプレイ膜を積層できる適当なスプレイ条件を明らかにした。さらに、初期の島状構造の凹凸は3~5回程度の積層によって緩和され、ほぼ平らな多孔質構造になる事も分かった。
|