研究課題/領域番号 |
15K06029
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
下村 和彦 上智大学, 理工学部, 教授 (90222041)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シリコンフォトニクス / シリコン / InP / 直接貼付 / 集積技術 / 量子ドット / 半導体レーザ / 光スイッチ |
研究実績の概要 |
シリコン基板上にIII-V族半導体量子ドットレーザとシリコンフォトニクス回路を集積した光集積回路を実現することを目的とした研究である。具体的には変調器、波長スイッチ等のシリコンフォトニクス回路を含むシリコン基板にInP薄膜を直接貼付し、そしてこの基板上に有機金属気相成長法によりIII-V族量子ドット半導体を結晶成長してレーザを作製し、シリコンフォトニクス回路-量子ドットデバイスの光集積回路を試作、研究する。 この研究目的に対して、平成28年度は以下の進展が達成された。 平成27年度の研究において、シリコン基板上にInP薄膜を直接貼付した基板上に有機金属気相成長法により波長1.2μm GaInAsPバルクレーザ構造を成長し、室温発振を達成したが、平成28年度の研究においてはこのInP/Si基板上半導体レーザの発振歩留まりを向上させ、しきい値電流、温度特性、電気特性等の諸特性をInP基板上半導体レーザと比較検討し、それらの成果を原著論文、国際会議、国内学会において発表を行った。特に、応用物理学会の論文誌Japan. J. Appl. Phys.に投稿した論文は学会のSpotlight論文に選ばれ、さらにHighlights of 2016論文に選ばれた。これまでに1800を超えるダウンロード数となり、非常に反響の大きな論文となった。 また光通信波長帯である1.5μm帯の半導体レーザとして、GaInAsP組成の条件だし、半導体レーザ構造の設計を行い、InP/Si基板上に半導体レーザ構造を結晶成長し、室温においてパルス発振を達成した。これらの結果は平成29年度において4件の国際会議がすでに内定している。またこれらの論文投稿を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シリコン基板上にInP薄膜を直接貼付し、この基板上に1.5μm帯GaInAsP半導体レーザ構造を実現した。X線回折、フォトルミネッセンスより1.5μm帯GaInAsP組成の結晶成長条件を検討し、最適な条件を用いて、半導体レーザ構造を結晶成長し、室温においてパルス発振が得られた。そしてしきい値電流、スペクトル特性、温度特性など半導体レーザの基本的特性を測定することができた。これらの測定は、InP/Si基板作製技術の改良を行うことによって半導体レーザの発振歩留まりが向上したことが大きな要因であり、InP基板上に作製した半導体レーザと、その諸特性を比較検討できるまでに至ったことは当初の研究計画以上の成果と考えている。 また量子ドット構造の成長条件の把握、光デバイスが集積化されたシリコン基板上への半導体レーザの集積は設計と実験方法の検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
シリコン基板上半導体レーザの特性向上を目的とした研究を行う。この半導体レーザを実用化するために、半導体レーザの横モード単一化によって、室温パルス発振から室温連続発振を達成することを目指す。そのためには、リッジ構造、埋込み構造などを検討し、しきい値電流を低減化し、室温連続発振を目標とする。室温連続発振が得られた後は、このレーザの寿命試験を行うことによって実用化のレベルまで到達させる。また量子ドット構造を導入した半導体レーザの試作、またレーザ以外の変調器、光スイッチ、波長合分波器が集積化されたシリコン基板に対して半導体レーザとの集積技術の開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費の端数が生じたため、次年度の使用に回した。
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次年度使用額の使用計画 |
InP基板の消耗品費の購入費として使用する予定である。
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