本研究の目的は、円筒座標系FDTD法の計算効率改善のため、陰的な局所的一次元(LOD)法を導入することである。また、周回方向の離散化のみに陰解法を用いるハイブリッド型半陰的円筒座標系FDTD法を開発することも含まれる。これらの手法を金属円盤形テラヘルツ表面波分割器の設計に応用することも目的の一つである。 最終年度では得られた成果の発表を主に行った。LOD法に基づく円筒座標系FDTD法に関しては、IEEE Photonics Technology Lettersで公表した(2017年6月)。本手法を周波数依存型にまで拡張し、その結果はIEICE(電子情報通信学会) Transaction on Electronicsで採録となった(2018年8月)。また、半陰的円筒座標系FDTD法においては、電子情報通信学会研究会にて成果を発表した(2018年1月)。現在、学術雑誌に投稿すべく、論文を執筆中である。以上の手法により、円筒型デバイスの計算時間が1/3~1/10に低減され、当初の目的が達成された。 さらに、金属円盤形表面波分割器をマイクロ波領域で設計し、実際に製造した。8~12GHzで放射パターンの測定をしたところ、計算結果と極めて良い一致を示し、設計の妥当性が確認できた。また、周波数分割の振る舞いも観察され、今後の応用に繋がる結果が得られた。この成果は国際会議にて発表予定である。 当初の本研究の目的には含まれていないが、円筒座標系FDTD法への入射固有モードを生成するための、円筒座標系Yee格子虚軸ビーム伝搬法の開発も行った。本手法により、回転対称構造に限らず、効率よい固有モードの計算が可能になった。この成果は学術雑誌に投稿中である。
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