研究課題
量子ドットレーザは理想的なバンド構造を持つのにもかかわらず既存の量子井戸型レーザよりも性能は劣る。そこで本研究は量子ドットレーザの性能を向上させるため量子ドットの成長方法の改善ではなくバンド構造に着目し改善を図る。(1)量子ドットの発行メカニズムに量子力学的効果を積極的に利用する構造を適用する。(2)積層成長方法において歪を低減する構造を適用ずる。光増幅率の向上、後続変調、そして温度依存の少ない理想的な量子ドットレーザの実現を目指す。具体的に以下の3項目を明らかにする。「1」量子力学的結合効果を生み出すシュミレーション、「2」積層量子ドットの成長、3」量子力学的効果の評価及び光増幅率の測定そしてレーザデバイスへの展開である。上記目的のために本年度は以下の取り組みを行った。1・光増幅率及び半導体歪効果を観測する装置の立ち上げをおこなった。またその精度を向上するための調整をおこなった。歪によるHHとLHのエネルギー差を0.01eVの精度が可能になり、歪によるわずかなエネルギー差を見分けることに成功した。2.高密度量子ドットと低密度量子ドットサンプルを作成し、光増幅率の測定を行った。光増幅率を調べたところ低密度量子ドットの1個当たりの光学利得と高密度量子ドットのそれと比較した場合低密度量子ドットの光利得が高密度より約100倍程度優れていることが分かった。このことから高密度量子ドットの配置を最適化することにより現在の100倍程度の光増幅率が達成されることを示唆した結果となった。3.近接構造量子ドットと今回提案している2重近接積層量子ドットの比較より、2重積層量子ドットの方が約3倍優れていることが分かった。このことから、2重積層量子ドットでは歪による結晶品質低下の減少と波動関数の結合によるマテリアルゲインの増加の2つの効果を同時にもたらしているものと考えられる。
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