研究課題/領域番号 |
15K06044
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
林 忠之 仙台高等専門学校, 専攻科, 教授 (80310978)
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研究分担者 |
立木 実 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 量子機能分野・超伝導位相エンジニアリンググループ, 主幹研究員 (50318838)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 走査プローブ顕微鏡 / 走査トンネル顕微鏡 / SQUID顕微鏡 / 磁気記録 / NMR / ハードディスク |
研究実績の概要 |
走査トンネル顕微鏡と走査SQUID顕微鏡を融合させたSTM-SQUID顕微鏡ヘッドに、励磁磁場生成用コイルを装着した磁気プローブを採用し、STMによる試料表面トラッキングと磁性薄膜への局所磁気記録、ならびに磁性薄膜からの磁気信号をSQUIDによって同時期に行える装置開発を進めた。また、局所磁場励起によるNMR計測環境構築を進めた。 STM-SQUID顕微鏡ヘッドに搭載するものと同等のコイルを装着した磁気プローブを製作し、垂直磁気記録ハードディスク上に励磁磁場を印加し、明瞭な磁気記録パターンが描画できていることを確認した。現有の市販の走査プローブ顕微鏡のSTMモードにおいて、磁気プローブを採用し、STMと磁気記録を同時に行えることを確認した。また、プローブの交換や記録用磁性薄膜の交換を容易にし、磁気記録実験を高効率化するために、3軸のピエゾステージとZ軸の長作動ピエゾステージを採用した走査トンネル顕微鏡を新たに開発した。この顕微鏡は、ナショナルインスツルメンツ製のPXIハードウエアとLabVIEW Real-Timeによるリアルタイム制御を可能とし、Windows OS上での割り込み処理を切り離して高速でトンネル電流検出と電流値によるピエゾステージのフィードバック制御を可能とした。 局所磁場励起によるNMR計測のための、計測システム(NMRスペクトロメーター)の整備を行った。NMRスペクトロメータを1機増設し、パルス送信系と受信系それぞれのソフトウエア環境を構築した。また、NMR信号送受信コイルのマッチング計測環境を配備した。構築した計測システムの送信系に電力増幅器、送受信系にクロスダイオード、受信系にプリアンプを設置して、3コイル方式でのヘキサメチレンテトラミン(HMT)試料のN14核種のNQR信号検出実験をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
STMとSQUID顕微鏡とを一体化し、磁性薄膜への局所磁気記録、ならびに磁性薄膜からの磁気信号をSQUIDによって同時期に行えるフェーズには到達していないことから、自己点検評価は(3)やや遅れているとした。 約150ターンで0.5mAの直流電流を通電した励磁磁場生成用コイルを装着したパーマロイ磁気プローブから磁場を照射し、垂直磁気記録ハードディスクの試料表面に、幅10マイクロメートル程度の明瞭な磁気パターンを描画できることを、磁気微粒子による現像法と磁気力顕微鏡MFMによる微細評価の双方で確認できた。この電流をコイルに通電した状態で0.1nAオーダのトンネル電流を検出しながら試料表面の形状をトレースすることはできているが、垂直磁気記録ハードディスク表面に記録した磁気パターンは明瞭度にかけている。これは、元来ハードディスクに記録されているパターンの残像があったためで、これを解決するために、超高磁場を印加してほぼ一様な磁化をもつ試料を作成することには至っており、今後は磁気記録の様子が明らかに観察できる見込みである。また、試料に縞状パターンを配置し、これをマーカとして磁気記録範囲をおおよそ把握できるようにしたが、ピエゾステージの稼動範囲が狭いため、MFMによる磁気読出範囲と磁気記録範囲を重ね合わせることに苦労している。 局所磁場励起によるNMR計測のための、計測システムを1機増設したことでパルス送信系と受信系それぞれのデバックが進展するようになった。3コイル方式でのヘキサメチレンテトラミン(HMT)試料のN14核種のNQR信号検出実験をおこなったところ、HMT特有のスペクトルを観察することができた。これまでコイルを用いた原理検証実験を外部磁場を用いないNQR測定において行ったが、低磁場NMR計測に特化したコイル、検出系の設計が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、試料の表面形状と局所磁場励起で記録した磁気バターンのSQUIDによる検出磁気像とを同時期に表示させる。指定の走査範囲において磁場を印加して磁気記録動作を行ったのち、90度走査でSQUIDによる磁場の検出動作ができることを確認する。このシーケンスを採用することにより、記録範囲そのものを読出し範囲とすることができる。 磁気記録パターン幅とコイルとの相関等、磁気記録の性能を詳細に評価するため、平成28年度に新たに開発した走査トンネル顕微鏡を大いに活用し、磁気記録信号の自動制御機能を装置に配備する。磁気記録の様子はMFMによっても並行して評価し、SQUID計測の優位性を検証する。 これまで使用している磁気プローブは直線プローブであり、試料から磁束を効率よくプローブで集束するための、プローブと試料の間の磁気閉回路を必要性について懸念しており、有限要素法解析を進め、効果があると判断できる場合は閉回路を配置したプローブヘッドへ改良を進める。 低磁場NMR計測用の自作測定システムの設計を進めるとともにプリポーラライズ、シムコイルなどの低磁場NMR対応装置を備えた既存のシステムを流用し装置への組み込みを設計検討する。走査顕微鏡システムにNMR計測部分を組み込み、NMRスペクトロメータを用いて計測を開始する。研究期間内においては、信号強度の強いプロトンを対象に検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行するにあたり、必要消耗品が当初計画より余剰した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の、消耗品(電子部品)に充当する。
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