研究課題/領域番号 |
15K06045
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
宮城 光信 仙台高等専門学校, その他部局等, 名誉教授 (90006263)
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研究分担者 |
岩井 克全 仙台高等専門学校, 情報ネットワーク工学科, 准教授 (10361130)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中空ファイバ / 赤外レーザ光 / 先端機能デバイス / レーザ治療 |
研究実績の概要 |
赤外レーザ光を用いる新しい手法である、胃のポリープ除去治療では、胃壁表面での水分にによる吸収が大きいため、大きなレーザパワーが必要であり、また胃の上部治療のためには半径15 mm程度の曲げに耐える伝送路が要求される。しかし、現存の伝送路では対応できない。 本研究では、この目的も含め、体を全く傷をつけず、従来にない新規な「無侵襲」治療を実現するため、低出力でも優れた切開能力を有するEr:YAGレーザ光と、止血能力のある高出力CO2レーザ光を同時伝送可能な光学膜内装銀中空ステンレスファイバの導入を提案し、太径でも急峻に曲げることができ、しかも破断のない、従来にない無侵襲志向の内視鏡用高信頼性中空ステンレスファイバシステムの実現を図ることを目的とする。 本申請では、内面平滑化膜が内装されている中空ステンレスファイバを用い、高出力赤外レーザ複合光(CO2レーザ光+Er:YAGレーザ光)伝送機能を有する無侵襲内視鏡治療用無破断中空ファイバシステムを開発する。技術課題は太い径のステンレスファイバで、曲げ半径15 mm、曲げ角270度を可能とする伝送路を製作するためのシリコンアクリル樹脂を用いた内面平滑化膜の成膜技術、複数の中赤外レーザ光を伝送可能な高信頼性中空ステンレスファイバの製作技術であり、達成すべき数値レベルは以下の通りである。 (1)高信頼性中空ステンレスファイバ用内面平滑化膜材料はシリコンアクリル樹脂とする。(2)高信頼性中空ステンレスファイバは、曲げ角270度、曲げ半径15 mmで使用可能とする。(3) 製作すべき中空ステンレスファイバの内径は0.55 mmとし、長さは1 mとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内面平滑化膜内装銀中空ステンレスファイバ先端素子の製作と評価を行った。ステンレスチューブの内面粗さによるファイバの伝送損失を抑制するために、ステンレスチューブ内面に平滑化膜を形成し、その後、銀膜を成膜する手法は、内面平滑化膜に光学膜材料の環状オレフィンポリマー(COP)樹脂を用いており、付着力に課題があった。そこで、内径0.55 mm、長さ20 cmのステンレスチューブに、内面平滑化膜材料として、新たに付着力に優れたシリコンアクリル樹脂膜を導入し、銀中空ステンレスファイバ先端素子の製作を行い、伝送特性の評価を行った。計画では内径0.53mmであったが、内径0.55mmと少し太径でも十分に曲げることができるため、当初より、より太径の無破断中空ファイバの製作を図ることとした。まず、内径0.7 mm銀中空ファイバに送液速度4 cm/minでシリコンアクリル樹脂溶液の送液を行い、干渉ピークからシリコンアクリル樹脂膜の膜厚を推定した。約45.5 wt%の溶液を用いれば、1回の成膜で約0.5μmの膜厚を成膜でき、内面平滑化の効果が期待できる。内径0.55mm、長さ20cmのステンレスチューブにシリコンアクリル樹脂溶液を送液し、その後、窒素ガスを流量50 ml/minで流しながら、室温乾燥を60分間行った。送液速度は、約8 cm/minである。その後、銀鏡反応により銀膜形成を行う。ステンレスチューブに銀膜を成膜することにより、低損失となり、更に、内面平滑化膜としてシリコンアクリル樹脂膜を成膜した銀中空ステンレスファイバ先端素子は低損失となった。シリコンアクリル樹脂膜を内面平滑化膜として使用し、低損失な内径0.55 mm、長さ20 cmの銀中空ステンレスファイバ先端素子を実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
内面平滑化膜内装銀中空ステンレスファイバの製作と評価を行う。平成27年度の研究成果を基に、シリコンアクリル樹脂膜(内面平滑化用)内装中空ステンレスファイバの長尺化を図る。具体的な手段、方法およびその内容は下記のとおりである。 (1) 内面平滑化用シリコンアクリル樹脂膜のコーティング技術の開発 中空ステンレスファイバ(目標長さ50cm~1m)に対してシリコンアクリル樹脂内装コーティング技術を確立する。送液速度、乾燥条件など成膜条件を明らかにする。 (2) 高信頼性シリコンアクリル樹脂平滑化膜内装中空ステンレスファイバの評価 可視~近赤外波長損失特性の測定、表面粗さの測定を行う。
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