本研究の目的は周波数利用が錯綜している昨今、電波と光波の谷間でその利用技術の確立が急がれているテラヘルツ波電磁波帯において、これまで我々が研究してきた非放射性誘電体線路(Non Radiative Dielectric Waveguide;以下本文ではNRDガイドと略称する)ミリ波集積回路技術を用い、レーダなどのテラヘルツ波帯フロントエンドを念頭に置いた低雑音かつ実用に供し得る出力電力を有し、常温で動作する連続波高安定発振器が、大掛かりな試作プロセス(ファンドリー)によらず、一般の町工場であっても試作できる技術を提供することにあり、平成29年度は以下の成果を得た。 (1)市販、汎用パッケージタイプ60GHz帯ガンダイオードを特殊ハウジングに組み込み、NRDガイド技術で発振させたところ、110GHz帯で発振する逓倍発振動作を確認した。まだ発振出力は低く、ガンダイオード素子と負荷回路の整合が十分なされていな状況であり、これを改善する研究を継続している。 (2)(1)の発振器を安定化するため、低価格な金属ロッドを用い、自己注入同期発振器を構成、その温度特性を評価した。発振周波数温度特性においては周波数ジャンプやヒステリシス特性などの問題が見られ、その課題を抽出した。 (3)(2)の問題点を克服するため、105GHz帯PLL発振器の研究をスタートさせた。回路設計にあって、具体的にはハーモニックミクサがその中心的回路素子になり、本研究では高誘電率基板を利用したショットキーバリアダイオード実装マウントの構造を、その導波理論をもとに考案した。その結果、理論と実験の傾向は一致し、現在そのフィードバック回路検討を継続している。
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