研究課題
我々が開発しきてきたインピーダンススケーリング回路は、電流帰還回路を基本とした原理で動作するため、高増幅率電流出力部における直流バイアス電流の不整合による多大なオフセット電流が生じる。その結果、応用したフィルタの各節点において大きなオフセット電圧が生じ、トランジスタ回路の動作点が適切な範囲から外れてしまうという問題があった。これに対する解決法として、本研究では、有効な解決法は、全差動形フィルタにおいて不可欠な同相除去回路の性能を高めることで直流同相成分であるオフセット電圧を低減する方法を見出した。その一方で、オフセット電圧が発生しないような低周波フィルタの構成法にも着目した。昨年度は、その成果として、MOCCⅡ(他出力第2世代カレントコンベア回路)を用いた低周波電流モードフィルタと、電圧帰還と電流帰還を組み合わせたインピーダンススケーリング回路を提案した。電流モードフィルタは、各能動ブロックの電流入力端子が低抵抗であるため、原理的にオフセット電圧が発生しない。この回路では、インピーダンススケーリング回路は使用せず、CCⅡの電流出力回路の電流係数を周波数スケーリング率として利用することで、フィルタ全体の低周波化を実現した。後者の手法は容量拡大率を電圧帰還部と電流帰還部の積に分解するため、電流帰還部の係数を小さくすることで、出力オフセット電流を低減することができる。これらの他にも、インピーダンススケーリング回路の機能を拡張し、周波数依存電流出力回路を設けて逆チェビシェフフィルタを構成する手法、対称型非接地インピーダンススケーリング回路の低歪化、および試作チップの計測結果報告等について発表した。本研究の成果は、低周波フィルタの完全集積化を可能とする重要な知見を示すものであり、医用電子機器の小型化軽量化、低電力化等に大きく貢献するものと期待される。
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IEIE Transactions on Smart Processing and Computing
巻: vol.6, no.6 ページ: 437,445
10.5573/IEIESPC.2017.6.6.437