研究課題/領域番号 |
15K06049
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
越田 俊介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70431533)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 情報通信工学 / 制御工学 / ディジタルフィルタ / 演算精度 / 確率的演算 |
研究実績の概要 |
平成27年度では,次世代のディジタルフィルタとして現在注目を集めている「確率的演算に基づくディジタルフィルタ」を対象として,確率的演算に基づくフィルタリングの精度を既存の手法よりも向上させることを主な目的として研究を進めた.さらに本研究では,付加的な成果として,可変のノッチフィルタに基づく適応信号処理の精度と処理速度の向上を達成することもできた.具体的な研究成果は下記の通りである. 1. 確率的演算に基づくFIRディジタルフィルタの精度向上 確率的演算に基づくFIRディジタルフィルタの実現法は既にいくつか提案されているが,それらの手法では加算をマルチプレクサによって実現しているために,加算の度に出力の振幅が小さくスケーリングされ,それによって演算精度が劣化するという問題が生じていた.これに対し本研究では,乗算については確率的演算で実装するが,加算については2値演算に基づいて実現するというアプローチを用いて,FIRディジタルフィルタを実現する手法を提案した.このアプローチを用いることにより加算結果のスケーリングの問題が無くなり,結果として,演算精度の大幅な向上が実験的に示された. 2. 適応ノッチフィルタによる周波数推定精度解析と周波数推定の高速化(付加的な成果) 信号の周波数推定など幅広いアプリケーションにて用いられている適応ノッチフィルタにおいて,周波数推定精度の理論的な解析および推定速度の高速化を達成した.この結果に本研究課題の確率的演算を採り入れることによって,周波数推定精度・速度の向上とともに,ハードウェアコストの削減をも達成するディジタルフィルタを実現することが将来的に可能になるものと期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度では,上述の通り確率的演算に基づくディジタルフィルタの実現法のみに焦点を当てて研究を進めていく予定であったが,その課題に関する成果が得られただけでなく,付加的な成果として,適応ノッチフィルタに対する研究成果も得られたため.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,まず,平成27年度の成果として得られた演算精度の高い確率的演算に基づくFIRディジタルフィルタの実現法をさらに改良し,精度とハードウェアコストの両方の面で,平成27年度の成果よりも有用となる実現法を確立する.また,FIRディジタルフィルタだけでなくIIRディジタルフィルタに対しても,同様の課題に取り組む.さらに,確率的演算において生ずる誤差を理論的に解析するとともに,その誤差を最小化するフィルタ構造の合成法の確立を目指す. また,平成27年度にて得られた成果を学術論文へ投稿し,およびシンポジウムでも発表することで,研究成果を広く公表していく.
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