研究課題/領域番号 |
15K06051
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
木村 雄一 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (90334151)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 平面アンテナ / アレーアンテナ / マイクロストリップアンテナ / 導波管スロットアレー / グレーティングローブ |
研究実績の概要 |
本研究では、方形導波管とマイクロストリップアンテナを組み合わせた新しい平面アレーアンテナを開発することを目的としている。方形導波管の広壁面上に配列されるスロットアレーアンテナで管軸に平行な偏波を放射するアレーアンテナを実現しようとすると、一般にグレーティングローブの発生が問題となる。そこで、本研究では方形導波管広壁面上のスロットアレーの上部にマイクロストリップアンテナを配列することにより、管軸に平行な偏波を放射する導波管広壁面の平面アレーアンテナを実現する。 平成28年度の研究計画は、アレーの構成要素となる素子アンテナの共振周波数を一定に保ちつつ放射量の制御を可能とする方法を検討することである。また、素子アンテナを3素子配列した定在波励振アレーアンテナを設計・試作し、提案する新しい平面アレーアンテナの動作を検証することである。 検討した素子アンテナは、方形導波管の広壁面の中央に管軸に対して垂直なスロットが開けられ、その上にマイクロストリップ線路で接続された2素子のマイクロストリップアンテナがプリントされた誘電体基板を配置した構造である。電磁界シミュレータを用いて素子アンテナを各部分の寸法を適切に調整することにより、一定の共振周波数11.2GHzを保ちつつ放射量を数%~約50%程度の範囲で制御できることを明らかにした。また、放射量を変化させた場合でも放射パターンの形状に変化はなく、指向性利得は約10dBiを示した。この放射量の変化範囲はアレーアンテナを設計するのに十分な特性である。さらに、上述の素子アンテナのデータを用いて、素子アンテナを3素子配列した定在波励振アレーアンテナを設計し、試作した。実験により設計された3素子定在波励振アレーアンテナは所望の特性を示すことを確認した。現在は多数の素子アンテナを配列した場合に有利となる進行波励振アレーの設計に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度の研究計画は、アレーの構成要素となる素子アンテナの放射量の制御方法を明らかにすること及び素子アンテナを複数配列した定在波励振アレーアンテナを設計し実験により検証することであった。本年度はこれらの目標を達成した上で、さらに次年度の計画である進行波励振アレーアンテナの設計に関する研究を着手し、成果が得られつつある状況である。以上のことから、研究の進捗状況は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策は、素子アンテナを複数配列した進行波励振アレーアンテナを設計する。目標とする励振分布は利得が最大となる一様励振分布とする。平面アレーアンテナの設計法として、定在波励振アレーと進行波励振アレーがある。定在波励振アレーは同一の素子形状を配列すればよいため設計が容易であるが、多素子となる場合には給電線路における損失が大きくなるため不利である。これに対して、進行波励振アレーは給電線路における損失が小さいため素子数の多いアレーアンテナでは有利であるが、進行波励振アレーでは一般に各素子の放射量が同一でないため、設計はやや煩雑となる。 設計する進行波励振アレーの素子数は8素子とし、設計周波数は11.2GHzとする。設計には本年度の研究で得られた素子アンテナの設計データを用い、一様励振分布を実現するために各素子アンテナの放射量は終端側から数えた素子の番号をnとして、1/n×100(%)となるようにする。また、給電点での反射特性を良好なものにするため、放射パターンの主ビーム方向はアンテナの正面方向から僅かに傾けるビームチルトとなるように素子間隔を設定する。設計された進行波励振アレーの解析には電磁界解析シミュレータを使用し、最終的な寸法の微調整を行う。最後に、設計された進行波励振アレーアンテナを試作し、実験により検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の見込額と精算額に差が生じたために経費に若干の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
進行波励振アレーアンテナを試作するための材料費および加工費、実験を行うための部品費、成果発表のための旅費および学会参加費等に使用する予定である。
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