本研究では、方形導波管とマイクロストリップアンテナを組み合わせた新しい平面アレーアンテナを開発することを目的としている。方形導波管の広壁面上に配列されるスロットアレーアンテナで管軸に平行な偏波を放射するアレーアンテナを実現しようとすると、一般にグレーティングローブの発生することが問題となる。そこで、本研究では方形導波管広壁面上のスロットアレーの上部にマイクロストリップアンテナを配列することにより、管軸に平行な偏波を放射する導波管広壁面の平面アレーアンテナを実現する。 平成29年度の研究計画は昨年度検討された素子アンテナを用いて、進行波励振アレーを設計し、実験による検証を行うことである。設計周波数は11.2GHzとし、配列するスロット数を8素子、素子アンテナ数を16とする一様励振分布の進行波励振アレーを設計した。進行波励振アレーは各素子の放射量が同一でないため、各素子において所望の放射量となるように寸法の異なる素子を配列する必要がある。また、素子間隔を導波管の管内波長と同一とすると、各素子からの反射波が同位相となるため給電点での反射特性が劣化する。そのため、素子間隔を導波管の管内波長から僅かに異なる値とし、主ビーム方向をアンテナ正面方向から僅かに傾けるビームチルト設計を行うことした。設計されたアレーの解析には電磁界解析シミュレータAnsys HFSSを使用し、最終的な寸法の微調整を行った。 電磁界シミュレーションにより設計周波数において良好な反射特性、放射パターン、利得が得られることを確認した後、設計された16素子定在波励振アレーを試作し、実験を行った。測定の結果、実測された反射特性、放射パターン、利得はシミュレーション結果と良く一致し、良好な特性が得られることを確認した。以上のことから、提案する平面アレーアンテナの有効性を実証した。
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