研究課題/領域番号 |
15K06052
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
宇野 亨 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80176718)
|
研究分担者 |
有馬 卓司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20361743)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 電磁界 / メタマテリアル / アンテナ / シミュレーション / 無限周期 / 表面インピーダンス |
研究実績の概要 |
本研究はメタマテリアルを用いたアンテナを設計するための電磁界シミュレーション法を開発することである.シミュレーション法としては,計算精度を保ちながらも計算機に過度の負荷を与えない方法として,FDTD法(Finite Difference Time Domain Method)を中核とする電磁界解析法を取り上げることとし,今年度も昨年度に引き続き(1)メタマテリアルベースアンテナと(2)メタマテリアルインスパイアードアンテナの設計法の開発とその有効性の検証を行うと共に,メタマテリアルアンテナがIoT(Internet of Things)用アンテナとして使用されることを想定して,(3)人体近傍アンテナの解析法についても検討してきた.(1)に関しては,異方性媒質に対するPML(Perfect Matched Layer)吸収境界条件の開発に当たってきたが,非分散性であるならば極めて制度の良いPML吸収境界を実現することができた.(2)に関しては,計算機負荷が小さい方法としてメタマテリアルの周期構造を高精度の表面インピーダンスで置き換える方法を開発してその有効性を確認した.この方法を用いて,周期構造のメタマテリアル近傍に単一の非周期アンテナが置かれた場合の解析法を検討し,その有効性を数値的に確認した.これらの成果の一部は,本研究代表者と分担者が共著者となった数値電磁界解析の専門書に書く加えて専門家に広く公開した.(3)に関しては,具体的なメタマテリアルアンテナを取り上げることはしないで,基本的なアンテナが人体近傍に置かれたときの電磁界を高速に計算する手法を新たに開発した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は前年度に引き続き(1)メタマテリアルベースアンテナと(2)メタマテリアルインスパイアードアンテナの設計法の開発とその有効性の検証を行うと共に,新たに(3)実装環境を想定した電磁界解析法の開発にあたる予定であった.これらはおおむね計画通りに進展しており,以下のような進捗状況である. (1)メタマテリアルベースアンテナ設計のための特殊媒質中の電界解析法の開発:メタマテリアルを巨視的にみると異方性媒質であると考えてよい.一方,アンテナの数値解析手法としてはFDTD法が有効である.ところが,FDTD法を用いて異方性媒質中の電磁界を制度よく解析しようとすると,異方性媒質に対する吸収境界が必要となる.本研究では研究担当者らが開発したPML吸収境界を3次元異方性媒質に拡張し,その有効性を確認した.(2)メタマテリアルインスパイアードアンテナ設計のための電磁界解析方の開発:メタマテリアルインスパイアードアンテナにおいては,周期構造を有するメタマテリアル近傍に非周期的なアンテナが配置されており,FDTD法のような純数値的な解析法では完全には解析できていない.そこで本年度は,メタマテリアルを等価的なインピーダンス壁に置き換える方法を検討しすつと共に,等価インピーダンス壁近傍の非周期アンテナのFDTD法解析手法の検討を行った.このようにすることによって計算機負荷を劇的に低減できるが,等価インピーダンス壁の精度が鍵になる.本年度は全年度導いた近似式よりも格段に高精度の近似式を導くと共に,アンテナ解析に応用した. (3)実装環境を想定した電磁界解析法の開発:メタマテリアルアンテナをIoT用アンテナなどに応用するために,アンテナ近傍にある電子機器や人体等の影響を考慮した電磁界解析法が必要となる.本年度はその一環として,人体近傍アンテナの高速・高精度の電磁界解析法の開発にあたった.
|
今後の研究の推進方策 |
現在までおおむね順調に進捗しているため,本研究課題の研究計画,推進方法に大幅な変更はない.今後も研究計画通りに進めてゆく予定であるが,最終年度にあたるため,今までの研究成果を論文などを通して広く公開することにも注力する予定である.(1)のメタマテリアルベースアンテナに関しては,前年度の結果を拡張して,異方性かつ分散性媒質に対する高精度吸収境界の開発を行う予定である.プラズマ異方性・分散性媒質についてはすでに見通しが立っていることから,より一般的な異方性に対しても精度よく解析できる手法の開発にあたる.(2)のメタマテリアルインスパイアードアンテナに関しては,理論的な検討を加えると共に,前年度開発した近似的な方法についても検討を加える予定である.この際,アンテナの入力インピーダンスについては精度良く解析できることことが分かってきたため,放射特性の高精度化を中心に検討を行う予定である.(3)の実環境を考慮した電磁界の解析に関しては,人体の影響ばかりではなく,周囲の電子機械との相互結合や,そのために引き起こされる電磁環境もまた解析できるような解析法を検討する予定である.
|