本年度は,大型画像変換の一つとして,任意サイズハール変換の最適基底アルゴリズムの解明,および画像マッチング精度の評価をおこなった.さらに,これまでの総括として,設計した大型近似離散コサイン変換(DCT)と任意サイズハール変換の評価をおこなった.国内外の会議に出席し,今後の応用への調査をおこなった.任意サイズハール基底セットの自由度はカタラン数に従うことがわかり,基底サイズが大きくなるほど,膨大な基底セットが存在することを明らかにした,シミュレーションでは全ての基底セットを評価することは不可能であることに加えて,画像および評価尺度により異なる評価となり,最適基底セットを見出すことはできなかったが,実験的におおよそ良好である平衡バランス木に基づく基底セットを提案した.これを用いて画像内マッチングによる画像ノイズ除去への応用をおこない,計算コストは非常に高い欠点をもつがマッチング精度の最も高いといわれる全探索法に比べて,ピーク信号対雑音比において上回る結果を得た. 本研究では,高速かつ高精度な画像マッチング手法の基盤の確立を目的とし,計算コストおよびメモリ使用量を大幅に削減できる大型画像変換の設計をおこなった.大型画像変換として,大型近似離散コサイン変換(DCT)と任意サイズハール変換を設計した.種々の画像データベースを用いて画像マッチング精度および計算コストを比較し,任意サイズハール変換は,設計した大型近似DCTを含む他の変換に比べて,計算コストおよびマッチング精度の両方において良好であった.開発した任意サイズハール変換は,従来画像マッチング技術の置き換え,および,ディープラーニングとの組み合わせや新たな画像理解・画像解析手法に用いる要素技術となる.学術誌1編,国際会議論文4編,国内会議論文6編を発表した.
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