本計画においては、異なる変調フォーマットの信号が混在する光ファイバ通信システムにおいて変調フォーマットに依存せず動作する、光信号波形再生機能を始めとする光信号処理機能の実現が目的である。 本年度は、強度変調もしくは位相変調信号に対する多重方式変換や信号の時間タイミング調整機能と、光信号配信に対する検討を中心として、以下のような成果を得た。 光ファイバの非線形現象により発生する広帯域パルス光のスーパーコンティニアム光を用いた、波長多重信号から時分割多重信号への形式変換を位相変調信号に対して試みたところ、先行の強度変調信号と比較して信号品質の大きな劣化が見られた。これは、スーパーコンティニアム光生成過程のスペクトル広がりに伴い発生する時定数の短い位相雑音の影響であることが明らかになった。波長多重信号から時分割多重信号への形式変換は、光ファイバのもうひとつの非線形現象である四光波混合を用いても可能であることから、四光波混合を用いた形式変換も試みた。この手法においては、強度変調信号に対して良好な形式変換が可能であることがわかった。 信号の時間タイミングを、信号の歪みを抑制しつつ可変調整できる、光フーリエ変換を利用した光ファイバ遅延線においては、強度変調もしくは位相変調信号の三波長の波長多重信号に対する可変遅延を試みた。全てのチャンネルに対して信号波形劣化の少ない変換特性を実現し、最大遅延量±2 ns の可変遅延に成功した。 ひとつの信号を多数の波長の信号に転写する波長マルチキャストの実現を、信号光と二波長クロック光に光ファイバの四光波混合を適用することで試みた。強度変調信号に対しては19波長、位相変調信号に対しては10波長への波長マルチキャストを、高い信号品質で実現し、先行研究よりも多数の波長チャンネルへの波長マルチキャストに成功した。
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