(1) 一般化回転行列を適用した軟判定受信機:一般化回転行列を用いることで、仮想伝搬路を適用した受信機の演算量と伝送特性のトレードオフが図れることを前年度までに示してきた。さらに、複数の一般化回転行列を伝送路状況に応じて適応的に選択することで特性改善を図れることが前年度までの研究により示された。さらに、適応選択の演算量が膨大となるため、演算量低減方法も前年度までに提案してきた。演算量低減法を適用した一般化回転行列選択と適応選択を行わない一般化仮想伝搬路を適用した受信機を組み合わせることで、よりきめ細かく演算量と伝送特性のトレードオフが図れることを明らかにした。 (2)繰返し軟入出力を行う仮想伝搬路を用いた過負荷MIMO受信機:仮想伝搬路を適用する受信機には、復調特性を鑑みて基底格子縮小を適用しているため、誤り訂正復号器には硬判定信号が入力されていた。そこでさらなる特性改善を目指して、軟入出力の導入を試みた。基底格子縮小から出力される信号から低演算量で軟判定信号を得る方法を考案した。仮想伝搬路を適用した受信機では、各仮想伝搬路での雑音分散が異なるため、軟判定信号に含まれる雑音の推定法も考案した。これらの新規信号処理方式を軟出力ビタビ復号器と組み合わせ、さらにはこの処理を繰り返す受信機を提案した。提案法を6x2過負荷MIMOチャネルに適用した場合、従来法に比較して平均ビット誤り率10-3点において約2dB特性改善できることを明らかにした。 (3)プリコーディングの適用による演算量低減:過負荷MIMOチャネルの一種とみなせる物理層ネットワークコーディングのためのパワーローディングを適用した非線形プリコーディングの検討を行った。
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