研究課題/領域番号 |
15K06068
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
松藤 信哉 山口大学, 理工学研究科, 教授 (00173873)
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研究分担者 |
松元 隆博 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (10304495)
井田 悠太 山口大学, 理工学研究科, 助教 (20711229)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CDMA / ZCZ符号 / Bent関数 / ブロック符号化 / 干渉除去 / 直交変換 / 高速移動体伝送 / 近距離伝送 |
研究実績の概要 |
本研究目的は,送受信全局との同期をぼぼ制御・確立する準同期方式とゼロ相関領域を有する拡散符号(ZCZ符号)を使用し、さらに、系列数を減らすことなくゼロ相関領域を見かけ上広げられるブロック符号化を適用することにより、移動体間での高速伝送に伴うマルチパスフェージング (超遅延)環境においても、理論上、シンボル間干渉や他局間干渉が無く、同時伝送局数が最多となるCDMAを構築することである。それらは、シングルキャリア方式とマルチキャリア方式に別けて議論できる。 前者は後者に比べて、送受信回路が比較的シンプルに設計できるが、想定外の超遅延波では、通信性能は大きく劣化してしまうと言う問題がある。上記問題を解決するために、本研究の一つとして、マルチキャリア方式で適用される(逆)フーリエ変換と同じような働きをするようにアダマール変換とその変換上でも乱数的な性質を有するZCZ符号を適用することを提案・検討した。 議論するZCZ符号は、アダマール変換上で全ての変換値の絶対値が一定となる性質を有し(Bent 型ZCZ 符号)であり、それらは、公式化され、乱数的な性質と鋭い非周期自己相関を持つことが確認された。また、アダマール変換を用いずともそれを前者に直接用いるだけで、後者と同等の誤り特性を有することが確認された。逆に、アダマール変換を適用した場合は、系列数を半分に分けて使用しないと他局間干渉が大きく現れてしまい、結局、システム全体の性能は劣化することが分かった。 次に、高速伝送を行うためには、ブロック長を長くすると、その長さに対応する次数の逆行列計算を必要となり、リアルタイム伝送が困難となってしまう問題がある。それを解決する一つの方法として、状況に応じて、複数のBent型ZCZ符号を利用した高速伝送方式について検討した。その結果、ユーザ数は減少するが十分に高速化伝送を実現できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学科長・専攻長に任命されたこともあり、予定していた学外での発表や論文投稿が遅れている。学外での発表は、学会・研究会5件(内1件は関連研究)と国際会議3件(内1件は関連研究)の発表であり、また、その内容に関しても、まだ、十分とは言えない。 しかし、核となる理論的な考察やその検証に関する探索は、おおよそ進んでおり、さらなる新しい基盤的なアイディアも創出できているので、さらに発展した議論が可能である。 また、ソフトウエア無線(USRP)を利用し、デジタル回路部をシステムソフトウエアにより試作し、その動作確認をしたが、多重伝送の実験を行う場合には、処理速度が遅すぎるために、性能評価の実験は困難であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度にきちんとまとめていない研究成果を国際会議や論文として発表することにも重きを置く予定である。また、本年度からは、社会人ドクターも入学したので、研究はうまく進んでいくものと考えている。 昨年度の研究成果を踏まえながら、特に、シングルキャリア方式およびマルチキャリア方式のBent型ZCZ符号とブロック符号化を適用したCDMAの発展および性能について検索する。前者は、後者に比べ、フーリエ変換(OFDM)技術を利用していない分、原理的には、2倍の周波数帯域幅を有するが、直交搬送周波数を利用することにより、システム全体としては、後者とほぼ同じように帯域幅を半分に抑えることは可能である。一方、後者は、前者に比べ、移動体上での高速伝送に伴うドップラーへの耐性が低い。そのために、一般には、パイロット信号の挿入回数を増やす必要があるが、それを増やすことなく耐性を高めることが考えられる。これは、OFDMにも適用できる技術である。 上記とハードウエア設計の容易性も含めて、総合的に比較し、議論していく予定である。 さらに、送受信回路・システム設計では、ニーズに合わせて、準同期方式にGPSを利用した方式が考えられ、それに関しても議論していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、3台の計算機サーバを購入する予定であった。しかし、室外での通信実験を行うにはソフトウエア無線USRPと回路設計のためのシステムソフトウエアも動かすノートPCが必要であり、また、同期制御を伴う多重実験を既存のUSRPで行えるかを確証した上で、再検討することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
上記で述べているように、現在のUSRPでは多重実験は困難であることが実験により確かめられた。現在、その事実も含めて考慮した上で、昨年に発売された高速処理が可能なFPGA付きUSRPの購入も検討している。 また、前にも説明したように、研究会等での発表、特許申請、そして、論文投稿が遅れているので、できるだけ計画通りにいくように時間を作るとともに、アルバイト料としての謝金を有効活用したい。
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