研究課題/領域番号 |
15K06074
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
太田 正哉 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70288786)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | OFDM / 帯域外漏洩電力 / プレコーディング / N-continuous OFDM |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,OFDMベースのDynamic Spectrum Access型コグニティブ無線において,二次利用者の送信信号の隣接帯域(二次利用者が使用する帯域の左右に隣接する帯域),および峡間帯域(既存利用者が使用する二次利用者に挟まれた帯域)への漏洩電力を同時に抑圧する新しい手法について検討することである.本年度は主にN-continuous Symbol Padding (NCSP)とOrthogonal Precoding (OP)の計算量削減について検討した. まずOrthogonal Precodingの計算量削減法としてプレコード行列を特異値分解すると,ここで得られる特異値行列の非ゼロ要素数が元の行列のサイズと比較して十分すくなることを発見した.これにより行列サイズを小さくすることが可能となり,大幅な計算量削減に成功した.次にN-continuous Symbol Paddingの計算量削減法として,同様な特異値分解を導入した.これにより計算量が削減され安価なFPGAへの実装が実現できることを示した.さらにこれまで2つのFFTモジュールが必要であたった計算を整理することでFFTを1つ削減することができた.以上からより現実的なサイズで回路実装が可能となった. 以上の研究結果をもとに2本の論文にまとめ受理された.また2件の国際会議および9件の国内研究発表会で発表した.国内研究発表のうち1件は招待講演である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,NCSPとSpectrum Sculpting Precoder (SSP)のハイブリッドにより漏洩電力を抑圧することを計画していた.これはSSPが峡間帯域への漏洩電力抑圧に優れているからである.しかしSSPは誤り率劣化を伴う手法であり,これが問題として残っていた.本年度はこの解決策としてOrthogonal Precoding (OP)を導入することでこの問題を解決することを試みた.OPは若干伝送効率が低下するものの誤り率劣化を伴わないプレコーディングであり,SSPとのハイブリッドが容易であることが以前から知られていた.ただし計算量が大きい問題があるため当初は本手法を検討外としてた.本年度になりこの計算量を大幅に削減できる手法を考案できたためその詳細を提案し,計算量削減効果を評価した. 一方,NCSPについても計算量削減法を提案した.本手法はプレコード行列を特異値分解することで計算量を削減するもので,廉価なFPGAへの実装に適している.HDLにより回路設計した結果,従来法よりも少ない回路規模で同等の性能が得られることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
NCSPおよびOPの計算量をさらに削減する手法について検討する.これまでの研究により大きな計算量削減を実現できたが,窓関数法などの単純な手法と比較するとまだ計算量が多く,実用化のためにはより効果的な削減法が必要である.回路設計も同時に進めその規模について評価する. 初年度はOPとSSPとのハイブリッド法の計算量削減について検討したが,今後はOPとN-continuous OFDMとのハイブリッド法の計算量についても検討する.N-continuous OFDMはSSPに比べて帯域外電力抑圧性能に優れており,これとOPによるハイブリッド法は従来のN-continuous OFDMの誤り率劣化の問題を伴わない.OPとN-continuous OFDMとのハイブリッド法の実用化に向けて,その計算量削減法について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験補助者が不要であると判断し,雇用しなかったため残額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進捗および実験内容に応じて実験補助者を雇用する.
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