研究課題/領域番号 |
15K06078
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
宮田 高道 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (90431999)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 画像復元 / 確率的凸最適化 / 凸最適化 / 画像処理 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,平成27年度までの成果を踏まえ,将来的に確率的凸最適化を適用可能と考えられる種々の凸最適化を使った画像復元等の画像処理アルゴリズムについて検討を行った.画像復元においては,グレイスケール(白黒)画像において極めて高いノイズ除去性能を示すアルゴリズム(重み付き核ノルム最小化(weighted nuclear norm minimization, WNNM)を一般のカラー画像へと拡張する試みを行った.WNNMは画像内の類似したパッチから作られる行列が,ノイズの無い画像では低ランクとなるという経験則に着目した手法である.これに対して代表者らの提案した手法は,カラー画像から抽出した類似パッチの集合をテンソルとみなし,このテンソルに対してWNNMの拡張である重み付きテンソル核ノルム最小化 (weighted tensor nuclear norm minimization, WTNNM)を行うことでノイズ除去を行うものである.実験によりWTNNMは既存のstate-of-the-artであったCBM3D(color block matching 3D)と比較して大幅に高いノイズ除去性能を持つことが示され,その成果を国際会議IEEE ICIPおよび国内会議にて発表した.また,WNNMの処理において観測画像から抽出した類似パッチが,実際にはノイズ除去に寄与していないパッチを含んでいることに着目し,それらのパッチが結果に悪影響を与えないようにWNNMを改良することにより,従来のWNNMと比較してより少ない計算量で同程度のノイズ除去結果を得ることに成功した.これらの手法は従来法と比較して極めて高いノイズ除去性能をもつ一方で,計算量が非常に大きいことが知られており,将来的にこれらの手法に対して申請課題のテーマである確率的凸最適化を応用することが必要であるといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,平成27年度までの成果にもとづき,確率的凸最適化によって大幅に計算量を削減する可能性があり,かつ既存のカラー画像のノイズ除去手法と比較して(計算量が多い一方で)極めて高いノイズ除去性能を実現する手法を提案しており,現在この成果を論文として投稿するための準備を進めている.平成28年度の成果は申請課題のテーマである確率的凸最適化を用いた画像処理の実現における重要なステップであり,研究全体はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,平成27年度の成果である「確率的交互方向乗数法の画像処理への応用」および平成28年度の成果である「(高計算量であるものの)極めて高精度なカラー画像のノイズ除去手法の実現」を融合させることにより,計算量と性能とを両立する新たな画像ノイズ除去手法を提案することなどを目的とする.その過程において,既存手法の適用では効果が出ない箇所が予想されており,確率的凸最適化アルゴリズムにおける新たな改良が必要となる可能性がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗そのものは順調であるが,研究課題の進展に伴って研究計画を見直したところ,備品の購入時期や成果発表の時期が平成29年度へと持ち越されることとなったため.
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次年度使用額の使用計画 |
備品の購入ならびに国際会議での成果報告に使用する予定である.
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