平成30年度には,平成27年度から平成29年度にかけて取り組んだ,A)重み付きテンソル核ノルムを用いた画像復元,B)重み付きシャッテンpノルムを用いたテンソル核ノルムを用いたテンソル復元,C)重み付き核ノルム最小化による画像復元における欠損テクスチャの復元,の3つのテーマについて主に研究を行った.これらの研究課題の着想は,本申請課題である確率的最適化を用いた画像復元を遂行する過程で得たものである. A)は,カラー画像から抽出した類似パッチの集合をテンソルとみなし,このテンソルに対して重み付きテンソル核ノルム最小化を行うことでノイズ除去を行うものであり,実験により既存のstate-of-the-artであったCBM3Dと比較して大幅に高いノイズ除去性能を持つことが示された.また,B)は行列のノルムの一種である重み付きシャッテンpノルムをテンソルの復元のために拡張したものであり,特に画像信号において既存手法と比較して高い性能を持つことが示された.C)は,ノイズ除去によって画像のテクスチャ成分が失われる問題を解決するために,ノイズ除去後の画像と観測画像の間の非自明な統計的関係を実験的に示し,これに基づいて失われたテクスチャ成分の分散共分散行列を推定することで当該成分の復元に成功した. これまでの研究で得られた研究成果は,国際会議(IEEE ICIP)1件,招待講演1件を含む国内学会9件である.また,研究期間内には投稿こそできなかったものの,現在前述の3つのテーマに関する論文を3本執筆している.これらの研究成果により,申請課題の研究目的を十分に達成できたといえる.
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