本科研費プロジェクトで実施した研究内容を学術論文2編と国際会議論文6編にまとめて発表した。以下、主な成果を簡潔にまとめる。
1.多カーネル適応フィルタにおける「カーネル化された入力ベクトル」の白色化を実現する計量を実現する、L2 空間射影に基づく非線形適応アルゴリズムを構築し、実データ(GPSデータ、電気回路出力)を用いて有効性を実証した。入力ベクトルの確率測度を用いてL2計量を定義する必要があり、本研究では、入力ベクトルが多変量ガウス分布に従う場合と全領域で等確率で生成される(noninformative prior)場合について計量を計算する手法を導出した。また、グラム行列(カーネル行列)に基づく計量も検討した。本成果は、IEEE Trans. Signal Processing 2018年8月号に掲載されている。
2.多カーネル適応フィルタを分散型に拡張し、理論解析を与えるとともに、実データ(地形の高度データ)を用いて有効性を実証した。瞬時誤差をゼロにする超平面を使用する代わりに、同集合を緩和した凸集合(hyperslab)を用いることで、深刻な誤差の増加を招くことなく更新頻度が大幅に削減されることを示した。時間変化するシステムへの適応性も検証した。さらに、分散型最適化で広く用いられるADMMに基づく手法に対する優位性を示したことは意義深いと考えられる。本成果は、ブレーメン大学(独国)との共同研究成果であり、IEEE Trans. Signal Processing 2018年11月号に掲載されている。本論文では、センサーネットワークへの応用をメインで議論しており、広い分野への貢献が期待できる。
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