研究課題/領域番号 |
15K06084
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
陶山 健仁 東京電機大学, 工学部, 教授 (50303011)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロホンアレー / 音源定位 / 音源追尾 |
研究実績の概要 |
今年度は,昨年度までに開発を行なった2マイクロホンを用いたリアルタイム音源追尾手法の改良ならびに性能検証,実機への実装を想定したアルゴリズムの改良について検討した。2マイクロホンシステムは空間信号処理を行なううえで,最低限必要なマイクロホン数であり,演算量削減の効果が見込める反面,空間解像度低下による追尾性能の低下が問題となる。そこで,マイクロホン間隔を20cmまで拡張し,空間解像度の向上を図った。しかし,そのために空間エイリアシング問題が発生し,追尾に用いる評価関数に偽りのピークが現れるという問題が生じた。この問題を解決し,真のピークのみを検出するために,空間エイリアシングの影響を受けない低周波数帯域の音源方向推定結果のみを用いて作成したヒストグラムに混合コーシー分布を当てはめ,音源ごとのペナルティ関数を生成した。高周波数帯域のヒストグラムにペナルティ関数を付加し,非線形最適化手法の1つであるPSO (Particle Swarm Optimization)を用いてピーク検出を行なった。この手法の利点は,ペナルティ関数によって音源ごとの存在範囲を限定可能であることと,そのなかに含まれる評価関数の複数ピークから最も大きいピーク方向をPSOの大きな特徴である少ない演算量で検出可能な点である。実環境実験によって,従来法と比較して追尾性能および演算速度両方で有効であることを確認した。さらに,実機への実装を考慮し,検討手法をDSP(Digital Signal Processor)で利用可能な演算のみを用いて実現可能となるように検討している。想定しているDSPは安価なものであり,利用できる演算も極限られたものである。現時点で逆三角関数の実装まで完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の段階で,検討手法の性能改善と性能検証まで完了している。残るは実機への実装を想定した手法の改良である。例えば,実機として汎用のPCを想定するならば,現時点でも十分実装可能であり,実用性の高い手法であるといえる。しかし,監視システム,見守りシステム,音声インタフェースなど今後想定されるアプリケーションではDSPや汎用のマイクロプロセッサへの実装が強く望まれる。そういった意味では,実機での実現を想定した手法の開発の必要性が高まっており,今後その検討が必要であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
実装すべき装置を汎用のPCに限定した場合の手法開発,性能検証はほぼ完了しているため,今後は実機,特にDSPへの実装を想定した手法の改良を進める予定である。具体的には,DSPでは積和演算に関しては得意な演算であるが,除算や各種ライブラリ関数は苦手な演算である。そこで,ライブラリについては積和演算を最大限活用した手法の改良,除算については除算の必要性,定数倍への置き換えの可能性について検討する予定である。また,音源追尾技術は多くのアプリケーションで必須となる技術であるが,反面,それがメインのタスクとなることは稀である。したがって,他の技術,例えば音源分離技術などと強調動作が要求されるため,全体的な演算コスト減は継続的な課題である。このような実装を前提とした諸問題について検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品として購入予定であった3次元位置計測システムについて,調査を進めた結果,申請時より10万円程度安価で同等の製品が入手可能であったこと,国際会議にて発表予定であった論文内容が不十分であり不採択となったため,そのための旅費が不要となり,合計22万程度の未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度の検討で多くの成果があがったため,その公表のための旅費として使用予定である。
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