研究課題/領域番号 |
15K06100
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
藤岡 豊太 岩手大学, 理工学部, 助教 (60292174)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 時間領域有限差分法 / FDTD法 / 非破壊診断 / コンクリート構造体 / 推定センサ信号 / プレストレストコンクリート(PC) / PC橋 |
研究実績の概要 |
1.これまでに提案・研究開発を行なっている大型コンクリート構造体の非破壊診断手法のさらなる診断向上のために,従来の提案診断手法と診断構造体の時間領域有限差分法(FDTD法)による衝撃弾性波解析を組み合わせ診断性能の向上とその実用化の目的のため,本申請研究ではFDTD法で得られる推定センサ信号の提案非破壊診断法への活用のための具体的な適用手法についての検討を行った. 2.平成28年度は,平成27年度末に実施したプレストレストコンクリート(PC)橋のサンプル構造体を用いた測定実験データの解析,また同サンプル構造体に対するFDTD法による衝撃弾性波解析を行い,前年度の検討結果も踏まえた上でさらなる解析・検討を進展させた.平成27年度では,実験による測定センサ信号をFDTD法による推定センサ信号の差分信号から欠陥の有無を診断する手法の可能性は確認できたものの,測定実験において同じセンサ信号でも測定毎のばらつきが生じた.その結果,同じ構造体の同じセンサであっても,測定センサ信号と推定センサ信号とでは大きな誤差が生じる場合があった. 3.実際の構造体の測定センサ信号と同条件での衝撃弾性波解析による推定センサ信号の誤差の原因としては,衝撃弾性波の信号源となる実験時の打撃信号とFDTD法による解析時の入力粒子速度が一致しないことが一因と考えられた.そこで,本研究では新たに,インパルスハンマから加振力が得られる利点を生かし,打撃信号と入力粒子速度により得られる逆フィルタを各センサに適用することで,測定センサ信号と推定センサ信号との誤差を低減できることを確認した. 4.さらに,測定時における手動打撃のためと考えられる測定センサ信号のばらつきも提案する診断には影響を与える要因となることも確認されたため,打撃の安定化も必要な部分である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,PC橋のサンプル構造体についての測定実験結果のさらなる解析と,FDTD法による衝撃弾性波解析による推定センサ信号の具体的な適用手段について検討を行った.そこで,インパルスハンマによる打撃信号と衝撃弾性波解析での入力信号との間の逆フィルタを求め,それを各センサ信号に適応することで推定センサ信号を補正する手法を開発した.その結果,測定時のセンサ信号と解析による推定センサ信号との誤差を低減し,前もって診断対象の構造体条件で解析したセンサ信号と実際の測定センサ信号との差分信号を診断に活用できる可能性を高めることができた. しかし,提案する非破壊診断法において現在は手動でのハンマ打撃を行なっているため,打撃のばらつきによると考えられる測定センサ信号のばらつきが確認されている.そのため,推定センサ信号を効果的に活用するためには,安定した測定センサ信号を得られる必要があり,そのための方策を検討する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
測定実験時に手動でインパルスハンマでの打撃を行なっていたため,どうしても打撃力や打撃角度にばらつきが生ずる原因の1つであった.そこで,非破壊診断時に安定した測定センサ信号を得る方策の1つとして,インパルスハンマでの打撃力および打撃角度を安定させるための打撃用治具を開発する必要がある.そして,先ずは治具の効果を確認するために,治具を用いて前回と同じ条件での測定実験を行い,治具の有無による診断精度への影響を検証する予定である. また,これまでのFDTD法による衝撃弾性波解析結果から,空隙の有無を影響が十分に得られセンサ位置を解析により推定できることを明らかとなった.そこで,診断に適切と考えられるセンサ位置を推定する手法を開発し,その結果,今までの測定実験でのセンサ位置が欠陥位置によっては診断に効果的な位置では無いセンサがあることが明らかにできた.そこで,改めて診断に適切なセンサ位置を推定し直し,再度適切なセンサ位置での測定実験を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は,主に前年度に行った測定実験時のデータ解析とFDTD法による解析等が主だったが,治具を用いたインパルスハンマの打撃装置の作成も考え,本年度にインパルスハンマを購入した.また,複数条件での解析を実行するため解析用計算機等を購入した.但し,当初予定した高性能で高価な計算機1台よりも,多少低性能でも安価な計算機を複数用いての同時解析の方が効率的と判断したため,それに該当する機種を選定した. 一方で,平成28年度は,新たにセンサを購入する予定としていたが,センサ位置の再検討をする必要もあり,センサ購入については次年度に延期した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は,年度始めに再度測定実験を行う予定であるが,より規模の大きいFDTD法による衝撃弾性波解析を行いたいと考えているため,可能な範囲でそれを満たす性能の計算機を購入する予定である.また,本研究に係わる論文を現在投稿中であるので,一部論文掲載料等に使用する予定である.
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