研究課題/領域番号 |
15K06106
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 陽介 京都大学, 工学研究科, 助教 (20589189)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光ポンピング / 原子磁気センサ / 多点計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体磁気計測に向けて光ポンピング原子磁気センサのポンプ光、プローブ光にMRIやCTの技術応用することで、多点同時・広域計測の可能性を検討することを目的としている。平成28年度は、CT的手法について検討を進めるため、プローブ光を分割して各点における磁気信号を計測することを計画していた。MR的手法では光ポンピング原子磁気センサの帯域幅の広さが空間分解能を左右していたが、この手法では、プローブ光や検出器の受光面のサイズにより分解能が決定されるため、より高い分解能が期待できる。 まず、プローブ光を複数本受光するための検出器を作製した。空間分解能を高くするため、受光面のサイズが2.5 mm x 2.5 mm で素子端のデッドスペースの小さいものを配列し、10チャネル同時計測可能な検出器を作製した。狭い受光面による信号強度の低下も見られず、十分に高い感度での多点計測が可能となった。 これを用いて、センサ直上に配置したループコイルから出力される磁場分布の計測を行った。このときループコイルから出力される磁場は軸対象であることから、検出した信号からアーベル変換により磁場分布を計算した。この結果理論値との大きなずれのない磁場分布の計測ができた。さらにポンプ光の分割・拡大による計測方向の増加についても検討した。現状のセンサセルの加熱系の窓が四方にしかないため、2方向からの入射に限られる。このとき、フルランクの行列計算が可能なのはポンプ光、プローブ光を2本ずつ入射したとして4ボクセルとなり、それ以上の多点計測を行うことが困難である。このことから同時計測を行う場合はセンサセルの全周を窓にし、多方向からプローブ光を入射する必要がある。今回は計測対象を回転させることにより、多方向からの計測を実現し、計測方向が多ければ多いほど計測精度が向上することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画で実施を予定していた項目については概ね実施できた。またアーベル変換による磁場分布の計算や計測対象を回転させることによる計測精度の向上が確認できた。しかしながら、多点計測とした場合に、現状のシステムでは多方向からのプローブ光の入射が難しいため、計測精度を向上するためには逐次計測が必要となり計測時間の増加につながる。これは、装置の改良という観点から全周を窓としたセンサセルの加熱システムを構築することで改善が可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の方針としては、当初の計画の通り、MRI的手法およびCT的手法の総括を行う。MRI的手法については、最も良い変調方式の検討や変調した時の感度低下の改善を行う。CT的手法については、プローブ光を多方向から入射した場合、スピン偏極の緩和の影響が大きくなるため、通常の光ポンピング原子磁気センサと比べ感度の低下が予想されるが、入射するプローブ光の総量からある程度見積もることができるため、最終年度ではこれについての検討を行う。また、CT的手法に関しては画像構成の計算手法により大きく画像の精度が変化することが予想されるため、その検討も行う。 最後に、それらの検討を踏まえて、検討された手法により3次元計測を実際に行い、本手法の有用性を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
プローブ光の検出器の作製に大学所有の3Dプリンタを利用できたことにより当該物品が安価にできたことや、光学素子の購入費を抑えることができたため、それらに充てる予定であった費用が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度では、本研究をまとめるため、前年度および本年度の結果を踏まえて追加実験を行うための電気電子部品や光学素子の購入に充てる。また、本研究の結果を対外発表をするため、出張旅費や学術大会参加費に充てる。
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