前年度に作製したR1000mm用の曲面対応型クロスT形表面SHセンサを用いて,精確な曲げ応力測定が可能な範囲を調べるために,曲げ応力測定において問題となっている試験片の曲率半径の変化に対しての測定精度について検討を行った. まず,曲面部材において試験片の厚みがどの様に音速測定に影響するかを調べた.その結果,表面波と試験片裏面からの反射波の干渉が測定精度に影響を与えることがわかり,これらの波形を識別することで,より精確な音速測定が可能である事が実証された. 次に,平面の試験体に曲げ応力を加え,ひずみゲージの値と比較することでR1000mm用の曲面対応型クロスT形表面SHセンサによる応力測定の精確さを確認した.なお,曲げ変形は,試験体の曲率半径がR1000mmになるときのたわみの値を計算によって求め,その値をもとに行った.このセンサで高精度な測定がおこなえる曲率の範囲を検証した結果,R1000mm用のセンサで845~2706mm,つまりセンサの曲率半径に対して-15~+170%の範囲であることを確認した.以上のことから,曲げ応力測定の際には測定対象より小さい曲率半径をもつセンサを用いることで精確な測定が可能である事が示唆された. 一方で,表面SH波音弾性法の実環境下への適用に向けて,表面SH波の伝搬音速の温度補正が不要で,被検体の温度変化が測定に与える影響を低減できる測定システムの構築を行った.二台のシングアラウンド装置をコンピュータで制御することで互いに直交する方向に伝搬する二方向の表面SH波の伝搬音速を同時に取得することを可能とした.結果として,屋外における測定において,従来手法では温度補正を正確におこなうことができず測定精度が悪化するが,提案手法を用いることで測定精度が向上し,許容誤差範囲内で測定できることを実証した.
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