近年開発されつつあるマルチモード/マルチコアファイバ(MMF/MCF)伝送路においては、インパルス応答(短パルスを入力した場合のモードや波長の違いによる群遅延時間差)の把握が特に重要である。特に、受信方式の主流となりつつあるデジタルコヒーレント方式では、群遅延時間差を可能な限り小さく抑えることが要求され、広い波長範囲で1kmあたり100ピコ秒以下(特定の波長近傍ではほぼ0)という小さなモード間群遅延時間差(DMD)を持つ光ファイバが開発されている。このような低DMD光ファイバのインパルス応答測定のためには、psレベルの時間分解能と、高い感度(広いダイナミックレンジ)に加え、短尺から数十kmまでの長尺にわたるデバイス長に対応するための測定距離レンジが必要となるが、このような条件をそろえた測定技術は実現されていない。 本研究では、線形サンプリング法と呼ばれる方式をベースとし、2つの短パルスレーザ間の位相揺らぎを補正する独自の手法を開発することにより、繰り返し測定による振幅平均を可能とすることで、psレベルの分解能と数十dB以上のダイナミックレンジを合わせもち、数十kmまでの測定距離に対応可能な院パルス応答測定技術を初めて実現した。本方式を利用して、2モード光ファイバのモード間結合をps時間分解能、80dB以上のダイナミックレンジで測定可能であることを実証するとともに、モード合分波器のモード間クロストークの評価にも応用できることを確認した。本成果は、次世代光ファイバ伝送路の評価技術として有望なばかりでなく、光ファイバ内のモード間結合スペクトルの測定を利用した新しい光ファイバセンシング方式の実現に寄与できる可能性もあり、今後の検討課題とする。
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