二波長法と逐次記録法を同時に実現する1ショット記録型のディジタルホログラフィ法について,基礎実験及び発展型として顕微鏡配置による可能性も含めて研究を行った。特に,塗膜内の応力解析の可能性も検討し,直交直線偏光を持つ2つの参照光を同時に記録する光学系を構築し,初めにDH顕微鏡により実験を行った。DH顕微鏡では,直交偏光の参照光路が異なることより,外乱の影響を受けやすく,100秒以上の長時間の測定において,記録した物体光の位相差が安定して求められないという問題が生じた。これに対して,様々な信号処理法や補正方法を検討したが,結局,長時間の安定性の確保が難しいという結論を得て,顕微鏡配置を取りやめ,通常のDH光学系において1ショット偏光記録と光源の波長を逐次切り替える形の2波長法実施によるUV硬化型接着剤の形状,変形及び応力解析を試みた。通常の光学系に戻して,更に直交偏光参照光路間の光路調査をなるべく小さくするよう光学系を改良し,DH顕微鏡の際に構築した位相補正方法を導入した所,500秒程度の測定に対して,位相安定性を±5°程度にすることができた。しかし,透明な塗膜を対象とした場合,長時間の測定においては透過型配置では二波長法による形状記録が上手く行かない問題が生じた。これは半導体レーザの注入電流変調時における電流値切り替えのタイミングによって波長が上手く推移しないという問題によることが分かった。これらを経て,長時間,安定した測定のためにはまずは直交偏光を1ショット記録し,これを繰り返すことで逐次記録法を実現することが,1000秒以上の塗膜解析を行うためには必要であることが分かった。
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