研究課題/領域番号 |
15K06110
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
吉永 哲哉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (40220694)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 強度変調放射線治療 / 最適化問題 / 微分方程式 / 非線形問題 |
研究実績の概要 |
強度変調放射線治療 (IMRT) 計画の問題は,照射ビーム係数に関する評価関数の最小化問題に帰着される.本研究代表者は,線量体積制約を満たす状況を表す acceptable (許容) の概念を新しく導入し,最適化の目標関数と結果の評価が異なる現状の課題を解消するアイデアを想起した.すなわち,線量体積制約を含む射影をベクトル場に持ち,acceptable な解への収束が理論的に保証された非線形微分方程式系 (ハイブリッド力学系) を考案した.さらに,数値積分の離散化に乗法的算法を用いることで,演算速度を劇的に高速化できる可能性も見出した.すなわち,従来法と比較して,高精度な IMRT 計画結果を高速に演算できる方法が達成可能であり,理論解析,数値解析,および実用化に向けた研究を行うことが本研究の目的である.
平成27年度は,まず,想起した微分方程式系にみられる平衡点 (理想的な治療計画結果に対応) の安定性を理論的に証明し,より柔軟な治療計画や ill-posed な状況での性質を調べた.次に,微分方程式系の離散化による反復法を定式化し,演算速度の実用的な高速化が可能となる原理が得られた.さらに,線量体積制約だけでなく,等価均一線量も評価関数に加えた最適化問題の解法を考案し,数値実験により有用性を検証できた.これは当初の計画では想定していなかった成果であり,より精度の高い治療計画を実現できる可能性がある.
学術論文が国際ジャーナルに採択され,得られた成果を国際会議で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
提案した微分方程式系にみられる平衡点の安定性証明と数値実験による検証,離散化による反復法の定式化などにより,演算速度の高速化への目処が得られ,計画通りに研究を進めることができた.一方,当初の計画で想定していなかった成果として,等価均一線量を評価関数に加えた最適化問題の解法を考案できたことに基づき,提案法より精度の高い治療計画を実現できる可能性が得られたことが挙げられる.以上,研究計画通りの結果が得られたことに加え,想定以上の成果が得られたことから判断した.
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に沿って研究を推進する.当初に考案した提案法よりも高精度の治療計画を実現できる可能性が得られたことから,評価関数に等価均一線量を加えた最適化問題の解法に対する理論的および数値的解析を実施することが課題であり,並行して研究を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
協力研究者の国際会議 (開催: 2月26日~3月3日) 発表に係る旅費と参加費の支出が年度内に間に合わなかったためである.
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次年度使用額の使用計画 |
実質的には平成27年度に使用しており,計画に何ら変更はない.
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