強度変調放射線治療 (IMRT) 計画の問題は,照射ビーム係数に関する評価関数の最小化問題に帰着される.本研究代表者は,線量体積制約を満たす状況を表す acceptable (許容) の概念を新しく導入し,acceptable な解への収束が理論的に保証された非線形微分方程式系を考案した.さらに,数値積分の離散化に乗法的算法を用いることで,演算速度を劇的に高速化できる可能性も見出した.すなわち,従来法と比較して,高精度な IMRT 計画結果を高速に演算できる方法が達成可能であり,理論解析,数値解析,および実用化に向けた研究を行うことが本研究の目的である.
平成29年度は,IMRT 計画の臨床設定を想定した数値実験を実施した.ファントムに必要な CT 画像と線量の設定値を公開されたデータベースから取得し,結果を評価するための解析プログラムを作成した.研究の達成により,既存の IMRT 設備においてもソフトウェアの導入 (交換) だけで高品質・高精度の IMRT 計画結果を高速に得ることが可能となる.線量体積制約に基づく IMRT 計画法を内外の研究者や医療関係者に報告し,評価関数の収束性,線量分布図,線量体積ヒストグラムに基づく性能に対して良好な評価を受けた.本研究課題によって,数値積分の離散化に乗法的算法を用いることで,実用的な演算時間で高精度な IMRT 計画結果が得られる方法の開発に成功した.結果を国際ジャーナルや国際学会等で公表した.また,すべての線量体積制約が acceptable とは限らない困難な問題に対し,必ず満たすべき制約条件と可能な限り制約に近づけたい条件に分離して定式化した最適化問題を構成し,問題を解決できるアイデアを研究過程で想起した.今後,研究を発展させ,患者への治療効果をさらに高めると同時に副作用を軽減できる画期的な治療計画の開発に繋げたい.
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